彦市   » 人類生存の危機 » 限界を超えたというシグナルヘの3通りの対応

 資源の消費量や汚染排出量が持続可能な限界を超えてしまった、というシグナルに対して、人間社会がとりうる対応方法は三通りあります。

シグナルを否定する

一つはそのシグナルを否定し、隠し、混乱させるやり方です。

 「限界なんて心配する必要はない。市場や技術がどんな問題でも自動的に解決してくれるから」と主張する人がいます。

また、「しっかりした研究結果が出るまでは、行き過ぎを減らす取り組みに着手すべきではない」と言う人もいます。

また、自分たちの行き過ぎのツケを、遠くにいる人々や将来世代に移し替えようとする人もいます。 たとえば、煙突を高くすることで、自分たちの地域は大気汚染を免れますが、汚染物質はより遠くまで風で運ばれていき、そこでだれか他の人がその空気を吸うはめになります。

また、有害な化学物質や核廃棄物を、どこか遠くの場所へ運んで行って捨てる人もいます。

 現在の雇用を守るために必要だからと魚を乱獲し、森林を過剰に伐採し、実際には雇用の究極の基盤である自然のストックを減らしている場合もあります。

資源が不足しているために事業が不振に陥つている資源採掘産業に対して補助金を出すのも、資源が不足しているというシグナルを否定し、隠し、混乱させるやり方です。

同様に、土地の生産力が低下しているのに、肥料の量を増加して補うこともよくあります。

また、恣意的な判断や補助金によって価格を低く据え置くと、不足があっても価格は上昇しませんから、不足に関するシグナルがきちんと届きません。

また、高過ぎる資源の利用を確保しようと、軍事力を背景に脅しを使う場合もあります。

 このような対応は、地球の限界を行き過ぎていることから生じる問題を解決するどころか、問題をさらに悪化させてしまいます。

技術や経済措置で対応しようとする

 第二の対応方法は、技術的な解決策や経済措置によって、限界からの圧力を緩和しようとすることです。

たとえば、自動車の走行距離1キロ当たり、または発電1キロワット時当たりの汚染の排出量を減らすための技術を開発して導入したり、資源の利用効率を上げ、リサイクルをし、再生不可能な資源の代わりに再生可能な資源を使うよう、取り組むことができます。

汚水処理や治水、土壌形成など、かつて自然が果たしていた機能の代わりを、エネルギーや人的資源(労働力)を用いて行うこともできるでしょう。

このような対策をすぐにとれば、これによって環境効率が上がり、当面の圧力を和らげ、貴重な時間を稼ぐことができます。

 しかし、このような対策で、原因を根っこから解決することになりません。

たとえ走行距離当たりの汚染が減ったとしても、走行距離自体が増えたとしたら、または車両数が増えたとしたら、問題を先送りすることはできても、解決にはならないからです。

システムの構造そのものを変える

 そして第三の対応方法は、根本的な原因に取り組むことです。

現在の地球構造では、人間の社会経済システムは限界を超えており、崩壊に向かっていることを認め、システムの構造そのものを変えようと考える取り組みです。

 「構造を変える」という表現は、社会革命のような響きがして、難しく危険で、特に経済力や政治力を有する人たちにとっては、恐ろしいことのように思われることがよくあります。

 しかし、システム思考で「構造を変える」とは、人を追放したり、モノを壊したり、官僚主義を解体することとは関係ありません。

システムの中のフィードバック構造、情報のつながりを変えることです。

つまり、システムの中の当事者が活動する際に用いるデータの内容とタイミング、行動を促進

したり制約したりする目標やインセンティブ、代償、フィードバックなどを変えることなのです。

 人、組織、物理的構造はまったく同じでも、もし、システムの当事者がそうすべきだという理由を理解し、そして変える自由やインセンティブまで持っているなら、まったく異なる行動をとることができます。

このような変革は、中央から指示する必要はなく、自発的に、自然に、少しずつ、ワクワクする形で進み、楽しいものになるでしょう。

 システム構造が新しくなれば、幅広い変化が同時に展開していきます。

既得権益にしがみつく人々が、重要な情報を無視したり、ゆがめたり、制限することを防ぐ以外は、だれかが犠牲になったり、意志に反して何かを強制されることはないはずです。

 人間の歴史には、これまでにも構造的な変革が何度か起こっていますが、最も意義深い例は、農業革命と産業革命でしょう。

どちらの革命も、「食べ物を栽培しよう」「エネルギーを使おう」「仕事を組織化しよう」という新しい「アイディア」から始まりました。

実際、この過去の革命が成功したからこそ、世界は次の革命----持続可能性革命----を必要としているのです。

 新しいやり方で自らの構造を変えようとするシステムの進化的な動きをワールド3(コンピュータ・シミュレーション)で示すことはできませんが、社会が「行き過ぎから引き返し、永遠の物質的成長よりも満足のいく持続可能な目標を追求しよう」と決意したときに出てくる変化のいくつかを試すことはできます。

[引用資料] b5



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初版日時: 2018-10-13 (土) 00:28:21
最終更新: 2018-10-14 (日) 09:59:37 (JST) (31d) by hikoichi