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 現在の遺伝子組み換えを使った農業の何が問題か、具体的に見てみたいと思います

遺伝子組み換えの定義

遺伝子組み換えとは英語ではGenetic Modification、つまり遺伝子操作です。

自然の中でも遺伝子は変化していきますが、この技術は人為的にたとえばクモの遺伝子をヤギにとか、魚の遺伝子をトマトにとか、バクテリアの遺伝子を大豆になど、自然界で起こらない遺伝子操作を強制的に行うものです。

(他の生物の遺伝子を組み込まず、RNA-iと呼ばれる方法で特定の遺伝子を抑制する遺伝子操作も含まれます)。

この遺伝子操作を日本では遺伝子組み換えと呼んでいるため、遺伝子組み換え問題の訴えに対して、自然でも起きている遺伝子組み換えを否定するのか、という混乱が起きることがあります。

しかし、遺伝子が親から子へと受け継がれる縦の遺伝子の継承と変容と、遺伝子組み換え企業が行なう異なる生物間の遺伝子操作とは明らかに異なるものであり、前者からは発生しない予想不可能な大きな問題が起きる可能性が指摘されているものです。

遺伝子組み換え農業が作り出す問題

   健康に悪影響を与える可能性が高い。
   自然環境を破壊する。
   有機農業、従来型農業と共存できない。
   民主主義と共存できない(社会を壊す)。
   世界を養えない、持続可能ではない。

健康に悪影響を与える可能性が高い

 遺伝子組み換え企業やその影響を受けた政府機関は、遺伝子組み換えは健康に害を与えず、安全だと宣伝しています。

しかし、その安全の根拠には根底的に疑問がつきつけられています。

その安全という根拠は、遺伝子組み換え企業自身が行った実験データなのですが、その実験はわずか90日だけであり、そのデータの詳細は一般には公開されていません。

遺伝子組み換え作物の危険を指摘する研究は多数発表されています。

一方で、危険性を指摘した学者が、発表後、職を追われるなどのケースも世界で相次いでいます。

健康への影響については、完全に中立な長期にわたる実験が必要とされています。

米国で急増する慢性疾患

 現実に遺伝子組み換え食品の割合が非常に高い米国では、遺伝子組み換え食品の出現と共にガン、白血病、アレルギー、自閉症などの慢性疾患が急増しています。

この事実だけから遺伝子組み換えの有害性を断言できるわけではないですが、危険の可能性は十分指摘できるでしょう。

水俣病のケースでも、チッソが垂れ流す水銀が水俣病の原因であることは指摘されていたにも関わらず、必然性が証明されないとして対策が見過ごされ多くの人びとが苦しみ、環境が汚染される結果を招きました。

遺伝子組み換えと健康被害の結果が完全に立証される頃には、もう取り戻せない状況になっている可能性があります。

そうする前に危険を避ける必要があります。

自然環境を破壊する
 遺伝子組み換えを用いた農業は、下記のような形態で自然環境を破壊します。

   農薬の噴霧とBt毒素(殺虫成分)による環境汚染
   遺伝子汚染
   化石燃料を大量投入による気候変動促進

農薬の噴霧による環境汚染

 現在、行われている遺伝子組み換えを使った農業では、農薬耐性遺伝子組み換えと害虫抵抗性遺伝子組み換えの2つが多くを占めています。

その中で農薬耐性遺伝子組み換えとは、農作物を特定の除草剤をかけても枯れないように遺伝子組み換えしたものです。

遺伝子組み換え企業は、この技術により除草剤の使用量が減ると宣伝しました。

しかし、実際には除草剤の使用量は逆に増えてきています。

その原因は除草剤をかけてもなかなか枯れない雑草が出現して、年々急速に広まっているからです。

その結果、除草剤使用量が急速に増え、1つの除草剤では対応できず、複数の除草剤に耐性を持たせた遺伝子組み換えが開発され、複数の除草剤を混ぜて撒くことになりました。

現在では、ベトナム戦争で使われた枯れ葉剤(2,4-D)やジカンバという危険な化学物質にも耐性のある遺伝子組み換えが開発され、その栽培が日本、米国、ブラジルなどで承認されました。

さらに危険性の高い農薬が、広大な地域に散布される可能性が出てきています。   遺伝子組み換えを使わない農業では、除草剤を作物にかけると作物が枯れてしまうので、作物にかからないように除草剤を撒くなど、除草剤の使用には制限がありますが、遺伝子組み換え作物の場合には作物にかけても農作物は枯れないため、飛行機を使った大規模な空中散布などが行われます。

しかし、風などにより、近隣の非遺伝子組み換えの畑にも流れてしまい、その畑の作物は枯れてしまう被害を出しています。   さらに、撒かれた除草剤は地下水を汚染します。

地下水を飲料水など生活用水として使う周辺住民の健康被害が生まれています。

アルゼンチンのコルドバ州イトゥザインゴ・アネクソでは、ガンがアルゼンチン平均の41倍も発生し、白血病、肝臓病、アレルギーなど深刻な病気が報告されています。   遺伝子組み換え耕作地域の母親の母乳、子どもの尿などから危険なレベルの農薬が検出されており、さらには魚や鳥などの死滅も報告されています。   もっとも使われている遺伝子組み換えは、モンサント社が開発した除草剤ラウンドアップに耐性のあるラウンドアップ耐性(Roundup Ready)遺伝子組み換えですが、このラウンドアップは土壌の有機成分を破壊してしまうと警告する研究もあり、実際に遺伝子組み換えの集中耕作地域での土壌崩壊が問題になりつつあります。

このラウンドアップがもたらす環境被害、健康被害には広範なものがあり、2015年3月20日、国連WHOの外部研究機関国際ガン研究組織(IARC)はラウンドアップを「おそらく発ガン性がある物質」(2A)というグループに分類しました。

殺虫バクテリア耐性害虫の出現

 現在の遺伝子組み換え農業でもっとも使われているのは、前述した除草剤耐性遺伝子組み換えと、ここで問題にする害虫抵抗性遺伝子組み換えの2つがあります。

この害虫抵抗性遺伝子組み換え作物では、土壌細菌のバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis:Bt菌)のBt遺伝子を使って、作物の中に特定の昆虫が食べると昆虫の腸を破壊するBt菌を生成します。

このBt遺伝子組み換えは、殺虫剤を撒かなくていい、と宣伝されました。

しかし、除草剤耐性の遺伝子組み換えで、雑草にも除草剤耐性がついてしまい、除草剤が効かなくなったように、この害虫抵抗性遺伝子組み換えの場合でもBt菌が効かない害虫(スーパー・ワーム、スーパー害虫)が出現しています。

ブラジルではその結果、2013年には1,000億円の被害が出て、ブラジル政府が承認していない殺虫剤を使ってコントロールしようとする事態となり、大きな問題となっています。   ネオニコチノイド系農薬

 蜂の大量死をもたらす農薬としてネオニコチノイド系農薬が、世界的に問題になっています。

遺伝子組み換え種子のほとんどは、このネオニコチノイド系農薬によって処理されていますので、遺伝子組み換え作物はこの面でも環境破壊に関係しています。

遺伝子汚染

 現在の遺伝子組み換え技術で作られた種子は、本来自然界が作り出すことは考えられない操作によって作られます。

最近、遺伝子のDNAの構造の解析が進み、遺伝子そのものの構造を人類は突き止めるまでに至りました。

しかし、その遺伝子がどのような機能を果たしているのか、まだまだ解明されていないことだらけです。

その解明が十分進んでいないまま、人為的にバクテリアの遺伝子をトウモロコシに組み込むことなどにより、自然にはない遺伝子を作り出しています。

操作された遺伝子が何をもたらすか不明なのに、その遺伝子が自然の中で広まっていきます。   一旦作られてしまった遺伝子組み換え作物は、自然界の中で従来の作物とも交配を繰り返していきます。

もし、一旦遺伝子組み換えトウモロコシを植えてしまえば、従来のトウモロコシにもその遺伝子組み換えのDNAを持った花粉がついて、交配していきます。

それ以前のトウモロコシとは違ったものになっていってしまいます。   現在の遺伝子研究はさらに進んでいます。

遺伝子組み換え作物の開発で前提とされているのは、特定の遺伝子は特定の機能を持つはずだ、というとても機械的な単純な仮定です(寒冷地に耐える魚の特定の遺伝子は寒さに耐える遺伝子で、それを農作物にいれれば寒冷対応にできるはずだ、など)。

しかし、実際には遺伝子はそうした単純なものではなく、1つの遺伝子が環境によって異なる複数の機能を持つことがわかりはじめています。

自然が繰り返す親から子への遺伝子の受け継ぎ(縦の遺伝子変容)と異なり、人工的に無理矢理、ある生物から別の生物への遺伝子の操作(横の遺伝子変容)には予測のつかない危険がある、と遺伝子研究者のデイビッド・スズキ氏は述べて、遺伝子組み換えの危険に継承を鳴らしています。   放射能汚染と同様、遺伝子組み換え汚染はいったん環境中に放出されてしまえば、次々にその汚染が拡がり、取り戻せないという危険が存在しています。

放射能汚染には半減期が存在しますが、遺伝子組み換え汚染には環境の状況によっては減ることなく、拡大していく可能性がある点、さらに問題があると言えます。

化石燃料を大量投入による気候変動促進

 遺伝子組み換えが米国などで拡がった要因の一つに、世界の化石燃料資源が不足する時代を迎え、バイオ燃料の生産に大きな補助金が出されているという現実があります。

サトウキビや大豆を大量に作り、そこからエタノールやバイオディーゼルを作ります。

バイオ燃料というアイデア自身は、うまく使えば化石燃料に依存しない持続可能なエネルギー源にすることができるでしょう。

しかし、この遺伝子組み換えサトウキビや大豆を使ったバイオ燃料の活用には大きな問題が存在します。   なぜなら、この遺伝子組み換え農業では、大量の化学肥料や農薬の使用が前提となっています。

化学肥料を作るには大量の天然ガスが、農薬製造には石油が必要となります。

つまり、化石燃料を大量に大地に撒く農業なのです。   実際に作物を育てるために投入されるエネルギーと作物から得られるエネルギーは、遺伝子組み換え農業の場合、大幅なマイナスとなってしまいます。

また、遺伝子組み換え作物生産を押し上げてきた駆動源が、バイオ燃料目的以外にもう1つあります。

それは、安価な肉を生産するファクトリー・ファーミング(工場式畜産)です。

ファクトリー・ファーミングでは、豚や鶏、牛を工場のように狭い空間に押し込み、遺伝子組み換えトウモロコシや大豆を飼料として食べさせますが、特に牛の飼育は大量のメタンガスを発生させます。

ファクトリー・ファーミングから放出される気候変動効果ガスは、飛行機、自動車、鉄道をすべて合わせたよりも多いと言われています。

こうした食の生産により、大量の気候変動効果ガスが放出されてしまい、洪水、干ばつ、暴風雨などによる気候変動が激化する可能性が強まります。

これに対して、化学肥料や農薬を使わないエコロジカルな農業生産では、はるかに高いエネルギー効率を得ることが可能で、また気候変動を抑止する効果が期待できます。

有機農業、従来型農業と共存できない

 遺伝子組み換え企業は、遺伝子組み換えを使った農業は他の農業と共存可能だ、と言います。

しかし、遺伝子組み換えが導入された地域で起きたことは、それがほとんど不可能なことを証明しています。

遺伝子組み換え作物の花粉の交配による遺伝子汚染や、遺伝子組み換え農業が行う大規模な有害な除草剤などの噴霧の流出によって作物が枯れてしまいます。

遺伝子組み換えを耕作していない有機農家の畑にも花粉が飛んできて、遺伝子汚染が起きてしまい、有機認証が無効になってしまうなどの被害が現に生まれています。

 また、遺伝子組み換えでない作物を出荷するためには、遺伝子組み換え作物と完全に独立した輸送システムを作らなければならなくなります。

これは高額な出資を必要とするため、維持していくことが非常に困難になります。

民主主義と共存できない(社会を壊す)

 遺伝子組み換えと民主主義が共存できない理由は2つあります。

1つには、遺伝子組み換え産業の存立が情報操作と不可分であり、もう1つは、遺伝子組み換えは農業生産の独占と支配を生んでしまい、民主的な社会の維持ができなくなってしまうからです。

遺伝子組み換えと情報操作

 遺伝子組み換え作物の問題点を研究していたら職を追われた、遺伝子組み換えの記事を書いたら首になった、そうした事件が世界で起きています。   EU(ヨーロッパ)には遺伝子組み換えに対して、しっかりとした食品表示義務があります。

遺伝子組み換えの持つ問題点についても比較的情報が流れており、市民の多くは遺伝子組み換えに批判的です。   このEUからは、BASFもモンサントも遺伝子組み換え作物の耕作を進めることができないとしてあきらめてしまいました。

ドイツの遺伝子組み換え企業BASFは、2012年に遺伝子組み換え研究所をドイツから米国に移しています。

米国には遺伝子組み換え食品表示義務がまだありません(2014年1月時点)。   米国の食品、農業行政を担う高官には、遺伝子組み換え企業に関わっている人がいます(遺伝子組み換え企業と政府の間を行ったり来たりするので、この関係のことを遺伝子組み換え企業と政府の回転ドアと呼びます)。

その結果、問題ある遺伝子組み換えが簡単に承認され、消費者に問題を知らせずに消費させるということが告発されています。

しかし、マスコミにも遺伝子組み換え企業は強い力を持ち、その告発を知らない人が多くいるため、事態を変えることが困難になっています。   遺伝子組み換えと独占・支配

もう1つの民主主義社会にとっての脅威は、遺伝子組み換え企業が遺伝子組み換え種子の特許により、農業生産の独占と支配を図ってしまうことです。

すでに世界の6大遺伝子組み換え企業は、世界の種子市場の66%を握っています(2011年)。

それと同時に自由貿易交渉などを通じて、農民が種子を保存して、翌年にそれを耕作する長年伝統的に行われてきた伝統的農業を禁止し、種子企業から種子を買わなければならないとする法律の制定を多くの国に強いています。

古来から続く農の営みを断ち切り、一部の多国籍企業の利益に変えていくことで社会全体が根底から変えられていってしまいます。

現在、世界で75%の農業生物多様性が失われたと言われています。

種子が、数少ない企業によって独占されることで、この多様性の喪失は今後、さらに加速する懸念があります。

気候変動や病虫害に対して、種子の多様性を失うことはその被害をさらに大きく受けることにつながります。

生物多様性の中にある文明にとって、これは大きな危機と言えます。   こうした動きには、世界で多くの人たちが反対を表明するに至っていますが、政府の高官を握った遺伝子組み換え企業はその反対を無視して、TPPなど政府間交渉を通じて、自らの利益をさらに高めようとしています。

世界を養えない、持続可能ではない

 世界の人口が90億人にもなろうと言われています。

遺伝子組み換え企業は、遺伝子組み換え作物こそ世界の飢餓を救う、と言っています。   しかし、遺伝子組み換えは、この世界を養うことはできません。  

まず第一に、遺伝子組み換えは高い生産性を保障しません。

次に、遺伝子組み換えは農薬や化学肥料を必要とする農業であるため、世界のすべての農民が実施することは不可能であり、不向きです。

実際に遺伝子組み換えが導入された地域では、土地の集中が生まれ、多くの小農民が土地を失い、飢餓人口が作り出されています。

遺伝子組み換えの導入により、人手がなくても機械を使って大規模農業ができる農業になります。

小数の豊かな農家はこれで利益を得ますが、多くの農民は土地を失い、社会的格差が大きくなります。   世界の人口爆発は、貧しい、特に女性の権利が守られていない地域で起きています。

遺伝子組み換え農業は、資本主義的経営をもたらし、多くの地域で女性が伝統的に果たしてきた仕事を奪い、その結果、女性の権利がさらに剥奪されます。

女性の権利の守られている地域では、人口の爆発は抑えられる傾向にあります。

女性の権利を侵害する農業モデルの導入は、むしろ人口爆発を抑えるどころか、その逆の効果をもたらす可能性すらあります。  

国連食糧農業機関FAO)は、この食糧保障のために、必要なのは遺伝子組み換えを使った農業のような大規模モノカルチャーではなく、生態系や農民、女性の権利を守るアグロエコロジーであるとして、2014年を国際家族農業年に設定し、小規模家族農業とアグロエコロジーの普及を進めています。

国連貿易開発会議UNCTAD)は“Wake up before it is too late”(手遅れになる前に目覚めよ)という報告書をまとめ、そこで遺伝子組み換えの農業などの大規模モノカルチャーを、早急に小規模家族農業に転換しなければ気候変動や飢餓の問題で破局的事態が訪れるとして警告を発しています。

[引用資料] s16


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初版日時: 2017-03-06 (月) 09:47:40
最終更新: 2018-04-13 (金) 18:50:13 (JST) (108d) by hikoichi