彦市   » 人類生存の危機 » 米科学者の原発反対『宣言』

-1975年8月6日ヒロシマ30周年記念-

米国大統領および議会にたいし米国科学・技術界のメンバー2,300名によるものです。

『宣言』

【核エネルギー】

核分裂は原子核の中に閉じこめられている莫大なエネルギーを放出する。

腹立ちまぎれに使うならば、核分裂は世界的規模の破壊をつくり出す。

平和時の電力エネルギーをつくり出すために使われるならば、大量の放射性副産物をつくり出す。

それは重大な危害を与え、極度に高度な注意力と知覚力、勤勉さによってのみ制御しうるものである。  

かつて科学者のあいだでは、核分裂は人類にとって尽きることのない新しいエネルギーの源であり、安全で、安価で、無公害だから価値があると熱心 に信奉されたことがあった。

この初期の楽観論は、重大事故,長期にわたる 放射性廃棄物、プルトニウムの健康及び国家の安全保障にたいする特別な危害、といった諸問題がますますハツキリと認識されるにつれて次第に崩れてきた。

また、全国的な広がりで進められている原子力計画において、累積する放射性物質のおびただしい量をまもるのに必要とされる高度な作業を、原子力を推進する人たちが遂行できず、従って重大な事故の数々の危険を高めていることもまた明らかとなった。

【論争点】

わが国の原子力計画は、今や、芽ばえつつある論議の焦点となっている。

科学技術界の多くの思慮深いメンバーたちや原子力計画に関し責任を持ついくつかの政府機関は、原子力の安全確保に関してさまざまな留保を行っている。

たとえば、基本的に原子炉の安全システムの有効性は、適切な実験的証明がないのであるから疑問とされている。

わが国の原子力発電所の操業記録は、今までのところ何一つの重大な事故もなく、まことに満足すべき事態である。

しかし全体的な操業記録は、小さなものであり、事故による災害が起らなかったからといって、それが将来にたいする保証とはならない。

実際、今日までの記録は主要な装置が数多く機能せず、作業員の誤操作があり、構造上の欠陥があり、さらに原子力発電所が組立てられる設備装置の品質管理の相つぐ弱点などの証拠を示している。

原子炉の安全性の現在の状態を認めるとしても、来るべき数十年のうちに原子力計画がフル・スケールで運転した場合、いかにして重大な災害が前もって排除されうるかを知ることは困難である。

原子炉計画が未来の幾世代にも残す冷酷にして不吉な遺産である放射性廃棄物(訳注:廃棄物に含まれるプルトニウムの半減期は24,000年)の最終処分に対しては、技術的にも経済的にも、未だ実行可能な方法は立証されてはいない。

 廃棄物取扱いのいくつかの提案はある。

そして、それら提案のなかの一つ、またはそれ以上のものが最終的には満足すべきものであるかのようにみせかけられることがあるかもしれない。

しかし、それらすべてのものについて、重要な問題が今日、未回答のまま残っている。

商業的原子力発電所と核爆弾の関連も、実に憂慮すべきもう一つの源であり、政府や外部の評論家によって行われてきたさまざまな研究は,商業用原子炉のつくり出すプルトニウムが、不法な核爆弾や放射性テロ爆弾に使うために盗まれたり、転用されたりすることを防ぐための保安手続きにいくつもの弱点のあることを指摘している。

プルトニウムの保安手続きを満足なものとするためには、アメリカの自由の伝統と矛盾する特殊な保障装置、即ち警察国家への道につき落しかねない特殊な警備体制を、広く普及させることが要求されるように思われる。

 プルトニウムの保安問題は国際的な次元をもっている。

というのは、合衆国、それから程度はやや小さいがカナダ、西独、フランスは、世界的規模の商業原子力発電所の販売計画をはじめたからである。

そして、もし彼等が現在のやり方を続けるなら、その販売計画は、核兵器のための手段、即ち、必要なプ ルトニウムを何十もの国に供給することができるからである。

  【勧告】

今や原子力をめぐる問題は重大であるが、必ずしも不治のものではない。

原子炉の安全性、プルトニウムの安全保障、廃棄物処分の研究についての主要プログラムが、もし優先順位と能力の程度をこれまでより一層増強されるならば、これまで積み重なってきた技術上の憂慮に対し、回答を与えることもできるかもしれない。

われわれは、そのような計画についての国民的配慮と採択を衷心より、勧めるものである。

しかしながら、一方では、安全性、廃棄物処理プルトニウムの安全保障について要求されている調査ならびに現在の論議の解決において、重要な進歩が達成される以前に、発電所建設をスタートさせ見切り発車を行うのは不謹慎きわまるものであることをわが国は認識せねばならない。

同様の理由で、われわれは、米国製の原子炉から出るプルトニウム副産物が、これらの国々によって使用される場合の国の安全保障問題の解決を棚上げして、原子力発電所を他国へ輸出するという計画は中止すべきだと衷心より勧めるものである。

上記の問題を解決するよりも先に、原子力エネルギーの依存を減らすためには米国はエネルギーの獲得と利用、石炭の採掘・転換・燃焼、代替エネルギー源の開発を行う現実的な政策を採用せねばならない。

これらの政策は重大な挑戦を提示し、エネルギー政策に関する全国的論議で今日まで大いに有効とされてきた決定を要求することになろう。

われわれは、先づ第1に、この国を総合的なエネルギー保存計画にゆだねればならない。

この計画は、あらゆる部門で、エネルギー使用の有効性を増進させるべきであり、従って輸送、冷暖房、エネルギーの工業用使用における現在の浪費を排除させるべきである。

第2に、われわれは、この国を火力発電所に空気汚染制御装置を速かに適応させ、炭鉱夫の安全性を改善するために、さまざまな努力を払い、露天掘りの災害を軽減する良心的な計画にゆだれねばならない。

これらの措置は、現在の混成エネルギー源から、来たるべき数十年の間に行われる、さまざまな調査努力を通して、われわれが開発するエネルギー源へと移行するまでの間、わが国がわれわれのもつ広大な石炭資源を利用すべきだとするならば、不可欠に重要である。

最後に、われわれは要求される技術的資源を、太陽、風、潮、地殻の熱のエネルギー利用を可能にせしめる、もっと恵み深いエネルギー生産技術を創造するためのフル・スケールの調査と開発の努力に必要とされる、さまざまな技術的資源をゆだねればならない。

核融合エネルギー研究にも、また一段と増強された優先順位が与えられるべきである。

ヒロシマに続いて原子力エネルギーを平和目的のために利用せしめようとしてきた試みは、誤りではなかった。

しかし、他の代替エネルギーの開発を実質上排除し、核開発のためにのみ資源をふり向けてきたということは、ヒロシマ以降の何十年間の判断における重大な誤りであった。

原子力エネルギーの商業化への努力が、安全性や国家保障問題に必要以下の考慮しか払わせないようにさせて来たことも、また不幸なことであった。

ヒロシマの30周年記念にあたり、アメリカはこれらの事実に注目し、核計画の大きな成長率を減少させ、 国民のためにふさわしいエネルギーを確保すべく、他の適切なステップをとらねばならない。

[引用資料] s14



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初版日時: 2018-10-13 (土) 00:34:57
最終更新: 2018-10-14 (日) 09:57:45 (JST) (31d) by hikoichi