彦市   » 依佐美送信所(改訂6版) » 高周波発電機の特徴

依佐美に設置された高周波発電機は世界最大級の 600 KWでした。

当時の世界情勢では、先進国が競って超長波による国際通信施設を建設していました。

その主要機器である大出力の高周波発電機は特定の国で造られていました。

それは、ドイツのテレフンケン社、アメリカのゼネラルエレクトリック社、フランスのSFR社でした。

それぞれに、工夫をこらした設計でユニークなものですが、依佐美には、テレフンケン社のものが設置されました。

以下に、その特徴と問題点を列挙します。

1。構造

600KWの大出力ながら外観はスマートで密閉型です。

極数は 256 、定格回転数は 1,360 rpm 、発電周波数は 5,814 Hz (ヘルツ)であり、 目的とする周波数の1/3の周波数でした。

また、重要な要素である回転子と固定子の隙間は約 1.0 mm でした。

発電周波数の可変範囲は ± 5 % , 5,510 ~ 6,090 Hz でした。

発電周波数は、磁極数と回転数で決まりますが、大出力機では下記の諸条件を満たさなければならず、設計者が苦労するところです。

*1。大電流に耐える太いコイル線を必要とするので、固定子および回転子の磁極が大きくなり、磁極数が増すほど回転部分の直径が大きくなる。

*2。回転数が高いほど、外径が大きいほど周速度が速くなって、慣性モーメントが周速度の2乗で増加する。

*3。回転子の材質強度に限界があり、肉厚を増せば重量が増加して慣性モーメントが増加する。

*4。使用形態が、全負荷の ONーOFF 繰り返しで、最も過酷な負担である。

*5。発電効率を上げるには、固定子と回転子のすきまを極小にしなければならない。

これらの諸条件を満たすためには、高度な加工精度が必要でした。

遠心力の公式  F=mRω   V=Rω

ここで、F:遠心力  :質量  R:回転子半径  ω:角速度  V:回転速度

 

2。輸送上の制約

外径が5m近くなると、貨車輸送ができません。

当時は、大型トレーラー車はありませんでした。

固定子、回転子ともに分割できませんので、大きさ、重量の制限がありました。

 

3。高度な回転数制御

当時花形だった長距離無線通信では、使用周波数割り当てにおいて、通信に最適な周波数範囲が限られていました。

つまり、経験上から、波長 10,000 m ( 30,000 Hz ) ~ 20,000 m ( 15,000 Hz ) が選択されていて、利用希望者が多い状況でした。

この周波数帯に 69 の送信所を割り当てる国際計画があったようで、1送信所当りの周波数使用幅は ± 110 Hz でした。

依佐美の 17,442 Hz にあてはめると ± 110 Hz は、± 0.6 % です。

裕度を 50 % とすると、± 0.3 %の回転数制御が必要となります。

設計値では ± 0.1 % であり、実際の性能では、± 0.02 % が実現できたと記録されています。

また、受信機は当時の新型スーパー・ヘテロダイン方式であり、可聴周波に変換して受信していました。

この受信機は、目的周波数のみ受信する性能(選択度)に優れ、近隣周波数の混信を受け難く、良好な可聴ができるものでした。

一方で、送信側では、許容変動幅の狭い正確な周波数を送信しなければなりませんでした。

このために、高度な回転数制御が必要でした。

依佐美では、ワードレオナード方式による直流駆動と発電機の励磁電圧制御と励磁電流制御を併用して、当時では世界最先端の技術で製作された設備でした。

 

4。水冷方式の採用

発電機内部の発熱が大きいので、コイルが焼損する危険がありました。

そこで、固定子部分に水冷却通路として沢山の穴があけられており、水を循環させて効率のよい冷却方法を採用していました。

また、送風機による強制通風での冷却も併用していました。

 

5。固定子コイルの中間点でアースに接続

これのよる効果は絶縁処理加工が容易になることです。

2系統の高周波単相出力を直列に接続して、この接続点をアース極に落とすことで、両端子の電圧がアースに対して対照となるので、終端をアースとする場合に比べて、2 分の1の対地電圧として取り扱うことが出来ます。



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初版日時: 2018-08-17 (金) 19:10:59
最終更新: 2018-10-11 (木) 19:43:14 (JST) (35d) by hikoichi