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1.波形整形用同調回路の計算

下図は、昭和 40 年 11 月の実測データ (複調式アンテナ方式) を参考として、筆者が一部修正した高周波回路です。

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以下に、回路定数の計算根拠を記します。

a) f 1 同調回路 Lp と Cp

発電機から派生する不要な高調波成分を除去します。 ( f1 = 9,190 Hz )

   同調条件は、2π x f 1 x Lp = 1 / ( 2π x f 1 x Cp )  Lp = 38 μH  Cp = 7.9 μF  f 1 = 9,190 Hz

  XLp = 2π x 9190 x 38 x 10 -6 = 2.2 Ω

  XCp = 1 / ( 2π x 9190 x 7.9 x 10 -6 ) = 2.2 Ω

b) f 0 同調回路 ( Lp + La + Lt ) と Ca

発電機出力の基本波 ( f0 = 5,814 Hz ) に同調させて、トリプラー内の基本波電圧を最適値にします。( f0 = 5,814 Hz )

  同調条件は、2π x f 0 x ( Lp + La + Lt ) = 1 / ( 2π x f 0 x Ca )  Lp = 38 μH  La = 113 μH Lt = 500 μH Ca = 1.165 μF  f 0 = 5,814 Hz

  XLp = 2π x 5814 x 38 x 10 -6 = 1.4 Ω

  XLa = 2π x 5814 x 113 x 10 -6 = 4.1 Ω

  XLt = 2π x 5814 x 500 x 10 -6 = 18.2 Ω

  XCa = 1 / ( 2π x 5814 x 1.165 x 10 -6 ) = 23.7 Ω

c) f 2 同調回路 ( Lb + Lc ) と ( Cb + Cc )

トリプラーから派生する不要な第5高調波成分を除去します。 ( f 2 = 29,150 Hz )

   同調条件は、2π x f 2 x ( Lb + Lc ) = 1 / [ 2π x f 2 x { ( Cb x Cc ) / ( Cb + Cc ) } ]  Lb = 366 μH Lc = 96 μH Cb = 0.1876 μF Cc = 0.10 μF f 2 = 29,150 Hz

  XLb = 2π x 29150 x 366 x 10 -6 = 67.0 Ω

  XLc = 2π x 29150 x 96 x 10 -6 = 17.0 Ω

  C = ( Cb x Cc ) / ( Cb + Cc ) = ( 0.1876 x 0.1 ) / ( 0.1876 + 0.1 ) = 0.065 μF

  XC = 1 / ( 2π x 29150 x 0.065 x 10 -6 ) = 84.0 Ω

 

d) f 3 同調回路 ( Lb + Lo ) と Cb

目的とする送信周波数 に同調させて、出力結合コイルの電圧を最適値にします。( f 3 = 17,400 Hz )

   同調条件は、2π x f 3 x ( Lb + Lo ) = 1 / ( 2π x f 3 x Cb )  Lb = 366 μH  Lo = 80 μH  Cb = 0.1876 μF f 3 = 17,400 Hz

  XLb = 2π x 17400 x 366 x 10 -6 = 40.0 Ω

  XLo = 2π x 17400 x 80 x 10 -6 = 8.7 Ω

  XCb = 1 / ( 2π x 17400 x 0.1876 x 10 -6 ) = 48.7 Ω

次に、上図の回路で、電流の関係について説明します。

9200Hz同調波」は、高周波発電機の歯型形状から誘起する波形には、ノイズ成分として僅かながら高次高調波を含みますので、これを除去する回路です。

5914Hz同調波」は、トリプラーに供給される基本波です。

これは、アンテナ回路の負荷により変動しますが、トリプラーの磁気損失分を含みます。

アンテナ回路がMARK状態になると、大きな電流が流れます。

29000Hz同調波」は、トリプラーで発生する約5%の第5高調波成分を除去する回路です。

174442Hz同調波」は、トリプラー内の磁気飽和によって180度遅れた歪み波形の電圧に含まれる第3高調波に共振させることで、約30%の第3高調波成分を分離する回路です。

この電流だけがアンテナ出力回路へ供給されます。

上記の仮定とアンテナへの給電電力から逆算すると、上図に書き入れた回路電流が推算されます。

次に、コイルとコンデンサに誘起する電圧について説明図します。

共振回路が形成されると、その共振周波数に対しては、コイルとコンデンサに電圧のピーク値が発生します。

この値は、周波数と回路の電流値とコイルやコンデンサの定数によって定まります。

特に、コンデンサに対しては最も電圧が高くなる条件にも耐えられるように、コンデンサを直列接続(串型接続)して許容電圧値を高めていました。

以下に、その計算根拠を記します。(過酷な条件であるMARK時についてだけ記します。)

Cp : ノイズ電圧分が1%含まれるとして、4 Aの無効電流が流れて、約 800 V 。

Cp は7.9 μFで、耐圧は4,000Vです。

Lp : 等価リアクタンスが 1.4 Ω となり、380 A で 530 V 。

Ca : 基本波 5,814 Hz により、コンデンサの等価リアクタンスが 23.8 Ω となり、380 A で 9,040 V 。

Ca は1.165 μFで、耐圧は11,700Vです。

La : 等価リアクタンスが 6.5 Ω となり、380 A で 2,470 V 。

Lt : トリプラーのメインコイルであり、等価リアクタンスが 15.9 Ω となり、380 A で 6,000 V と計算されますが、磁気飽和により発生磁力線が頭打ちとなって約5,200Vとなります。

トリプラー内の電圧波形は台形に近くなり、多くの高調波を含む歪み波です。

この6,000 V は、発電機の出力電圧の4倍となっています。

Lb : 第3高調波 17,442 Hz によりコイルの等価リアクタンスが 36.9 Ωとなり、電流値 340 A で12,550 V を、そして、第5高調波 29,000 Hz によりコイルの等価リアクタンスが 61.3 Ωとなり、電流値 18 A で1,100 V が重なり、合わせて13,650Vとなります。

Cb : 第3高調波に対する等価リアクタンスが 48.7 Ωとなり、電流値 340 A で16,560 Vを、第5高調波に対する等価リアクタンスが 84.0 Ωとなり、電流値 18 A での発生電圧をCc とで分担して 530 Vが重なり、合わせて 17,090Vとなります。

Cb は0.1876 μFで、耐圧は15,600Vです。

Lo : 第3高調波に対する等価リアクタンスが 11.8 Ωとなり、電流値 340A で4,000 V 。

Cc Lc は、第5高調波をバイパスするもので、含有率を5%程度と推定しますと、MARK時の電流が18A となり、発生電圧をCb とで分担して985V となります。

Cc は0.1 μFで、耐圧は4,000Vです。

2.アンテナ回路の計算

下図は、アンテナの等価回路を推算して、各素子の定数と出力条件に適合する電流値を逆算して、それぞれの素子に発生する電圧を記したものです。

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以下に、MARK時について回路定数の計算根拠を記します。

 同調条件は、XL = XC

 具体的には 2π x f o x L = 1 / ( 2π x f o x C )  

 L = L5 + L6 + Lw + Ls + T2 = 50 + 1200 + 390 + 20 + 121 = 1781 μH

 C = 0.054 μF

 f o = 17442 Hz

  XL = 2π x 17442 x 1781 x 10 -6 = 195 Ω

  XC = 1 / ( 2π x 17442 x 0.054 x 10 -6 ) = 195 Ω

大地(アース極)を基準として、アンテナの先端部に 31,000 V の最大電圧が発生します。

また、建物貫通部の電圧は 24,000 V になり、この電圧はアンテナ鉄塔にも発生します。

このため、鉄塔は大地と絶縁するために基礎台座と支線に碍子を挿入して、電気的に浮かせてあります。

アース極での電力損失を減らすためには、スクリーン状にアース線を敷設して抵抗値を下げてありますが、 1.5 Ωが限界です。

3.信号注入回路の計算

キーイングチョークが動作したMARK時では、タンク回路のインピーダンスが 10.7 Ω となって、回路での消費電力は 12.5 KWです。

他方、SPACE時では、キーイングチョークが休止して、チョークコイルのインダクタンスが 113 μHに上昇しますので、コンダクタンス Xk = 12.3 Ω となり、コンデンサのコンダクタンス Xc = 10.7 Ω との差 1.6 Ω が Rk = 0.25 Ω と二乗和平均されて、回路のインピーダンスとなります。

Z = √ {( 12.3 - 10.7 ) 2 + 0.25 2 } = 1.62 Ω

回路の循環電流 = 1450 / 1.62 = 894 A

抵抗器の消費電力 = 894 x 894 x 0.25 = 200,000 W

コンデンサに発生する電圧は

Vc = 894 x 10.7 = 9,565 V ( コンデンサの耐圧は11,800 V )



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初版日時: 2019-01-15 (火) 19:35:21
最終更新: 2019-01-15 (火) 19:35:21 (JST) (7d) by hikoichi