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5-29. 逆L型アンテナの設計について

超低周波アンテナは、アンテナ素子の長さが大きくなり、特殊な構造となります。

逆L型アンテナは、4分の1波長ダイポールを出来るだけ高い位置で折り曲げて、地面に平行に配線敷設したものです。

そして、地面に平行に配線敷設した投影面にアース極を網状に敷設します。

これによって、地面を鏡面した虚像効果(鏡面効果)を生じて、給電側に向かって指向性を持つ垂直偏波を放射します。

以下は、依佐美送信所のアンテナについて、設計根拠を推察するものです。

1.基本式

・架空線のインダクタンス(磁気容量)・・・1式

23y39-3.jpg

・架空線のキャパシタンス(静電容量)・・・2式

23y40-2.jpg

・アンテナの共振条件 ・・・3式

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・誘導式 L x C ・・・4式

28y-2.jpg

2.アンテナの鉄塔高さ

アンテナ素子の水平部では、共振電圧が高いほど強い電波が放射されます。

共振電圧は、リアクタンス(XCおよびXL)の値が大きいほど高くなります。

XC=1/(2πfC) ですから、Cの値が小さいほどXCの値が大きくなります。

Cの値は、2式より、アンテナ線が細いほど、鉄塔の高さ(折り返し点)が高いほど小さい値となります。

アンテナ線は強度的な制約から直径10mm が限界でした。

鉄塔の高さは、建設費および支線の制約から250m が限界でした。

3.送出電力

ヨーロッパ諸国からアメリカまでの大西洋 5,000km の送信電力が200KW で実現していました。

これに準じて、日本とヨーロッパ諸国の 10,000km では500KW が必要と見積もられた様子です。

4.アンテナ素子の分岐数

1式より、アンテナ線が細いほどインダクタンス値が大きくなりますが、設計上の制約から直径10mm の銅線が限界でした。

一方、高出力とするには太いアンテナ線を必要としますが、この対策として、アンテナ素子の分岐による並列給電となりました。

依佐美送信所の設計では、ヨーロッパ諸国での実績とアンテナ線の発熱損失量とを考慮して、16本に決定されたと推察します。

そして、鉄塔の間隔が500m ですと、たるみ量が最大値20m として、アンテナ素子相互の接触防止のため、線間の離隔距離を18m に設計されました。

この結果、8本の鉄塔が4角形を並べた配置となり、強度のバランスが取れました。

5.アンテナ素子の長さ

試算した結果では、約2,800m が理想です。(下の注1参照)

しかし、敷地の確保と建設費からの制約がありました。

妥協策として、立上げ部で300m 水平部で1,500m となりました。

インダクタンス値の不足分はローディングコイルで補いました。

この結果、アンテナ自体の実質放射電波の量が4割近く減少しました。

6.鉄塔の絶縁

アンテナ線に供給される高周波は約700V でした。

対地絶縁は、吊架線と鉄塔の間に碍子を挿入して絶縁する方式が一般的です。

しかし、依佐美送信所の場合は、吊架線の引張力が大きくなって碍子部の設計が難しいので、鉄塔の対地絶縁となったものと推察します。

この為、鉄塔下部は、特殊な構造となりました。

7.電波の伝わり方

4分1波長のダイポールアンテナであれば、指向性の無い垂直偏波です。

逆L型アンテナでは、立上り部分からは指向性の無い垂直偏波が送出されますが、水平部分からは指向性が有る垂直偏波が送出されます。

しかも、鏡面効果により、地表面や海面に沿って伝搬します。

この特徴を持つことで、潜水艦に向けた送信が可能になっています。

近くの太平洋方面では、海面下15m までの位置で、受信できたと報告されています。

これは、電波の振幅が大きいので受信できたものと推察します。

アメリカ海軍が復調式に改造した理由は、潜水艦向けの送信を強化するためであったと推察します。

注1

fo = 17,440Hz 水平部分の長さ:n = 1,500m として、3式に代入します。

√(LC)=1/ (2πnfo)= 6.016 x 10 -9LC = 36.8 x 10 -18

他方、r = 5 x 10 -3m  h = 250m として、5式に代入します。

LC = 1.13 x 10 -17 √(LC)= 3.36 x 10 -9 この値を4式に代入して、n(アンテナの理論的長さ)を求めます。

n= 1 / (6.28 x 17,440 x 3.36 x 10 -9)

n = 2,778m

 


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初版日時: 2018-10-13 (土) 10:20:12
最終更新: 2018-10-14 (日) 21:16:07 (JST) (32d) by hikoichi