彦市   » 依佐美送信所(改訂9版) » 信号注入回路

設置当時から、ヨーロッパ諸国とモールス信号で通信していました。

記録によると、毎分 150 語でモールス信号を自動送信した記録がありますので、1秒間に 約 13 回近い On-Off 操作となり、負荷補償用のリレーが1秒間に 13 回も動作を繰り返していたようです。

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上図は、信号注入回路のキーイングチョーク休止時の回路図です。

これは、信号送出待機時とモールス信号のSPACE時(キーがオフ)の状態を示しています。

信号送出の待機状態では、直流発電機の励磁電流を減少して直流出力は 430 KW ( 50 % ) となり、高周波発電機の出力は 300 KVA (50%) となります。

キーイングチョークの励磁用の直流は遮断され、動作を休止しています。

チョークコイル LK のリアクタンスが 113 μH となり、タンク回路が送信周波数に共振した状態(同調状態)になります。

タンク回路が同調状態になると、キーイングコイル(信号注入用結合コイル)の相互インダクタンスが増加して、1次側のコイルのインダクタンスが 41μH 低下します。

このために、アンテナ回路の同調状態が崩れてアンテナ素子への電流が低下して、放射電力が 20KW まで極端に低下します。

しかしながら、この無駄な電力消費は、発電機の機械的強度と安定度の面で必要であって、負荷の減少を50%までに留めます。

また、トリプラーの磁気飽和状態を維持する為でもあります。

この状態のアンテナ給電は 240 KW 出力となっており、アンテナ回路で 20 KW、アース極で17 KW の損失があり、残りの 200 KW はこのタンク回路の補償抵抗器で熱となって消費されてバランスしています。

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上図は、信号注入回路のキーイングチョーク動作時の回路図です。

アンテナ回路が17,442Hz に同調した状態に対する素子に発生する電圧値を併記してあります。

信号 キーオン時は、キーイングチョークの励磁回路に通電して、磁気飽和により、キーイングチョークコイルのリアクタンスが極端に低下します。

このために、タンク回路の同調状態が崩れて、回路の電流が220A まで低下して消費電力が12KW まで低減します。

同時に、リレーを介して直流発電機の励磁電流が増加されるので、直流出力は 860 KW ( 100 % ) となり、高周波発電機の出力は 600 KVA (100%) となります。

アンテナ側の等価回路においては、コンデンサーのリアクタンスがコイルのリアクタンス合計値と等しくなって、実質的に抵抗分だけの回路と同じ状態となっています。

電流計は159A を示し、給電部の電圧は3400V となり、出力は540 KW の状態です。

この様な動作で、キーイング動作(MARK(マーク)時とSPACE(スペース)時の断続信号変化)をアンテナ出力変化( 500KW (100 %) ー 20KW (4 %)の2値変動)とすることで大出力の信号送出を実現していました。

 

また、タンク回路の時定数は t = Ck x Rk = 0.855 x 10 -6 x 0.25 = 0.213 x 10 -6 秒であり、

5 t = 1 x 10 -6 秒であり、信号波形に影響を及ぼすことはありません。

この回路定数であれば、高速度なキーイング操作に同期して、アンテナから電波が放射されることが理解できます。

ただし、信号送出待機時には、SPACE状態となりますので、タンク回路で大きな電力を消費しています。

このため、信号送出作業は、相手国別と予め打ち合わせて、スケジュールに従った定時通信を行うことで効率のよい運用が行われていたと推察します。

下記の項目をクリックすると関連説明があります。

5-10.キーイングチョークの構造

5-11.コンデンサの構造



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初版日時: 2018-08-15 (水) 17:00:06
最終更新: 2019-01-15 (火) 19:32:38 (JST) (67d) by hikoichi