彦市   » 依佐美送信所(改訂9版) » おわりに

意気込んで技術面からの解明を試みたものの、資料不足と知力不足で満足できるレポートができあがりません。

制御系統の配線は全て廃却されているし、解体直前の資料は刈谷市に保管されていると聞くが非公開でお蔵入りです。

有閑ではあるが脳が軟化しつつある後期高齢者が無い知恵を振り絞って、試行錯誤を繰り返してまとめたレポートです。

知るほどに記述の間違いや矛盾点に気づいて改訂を重ねましたが、第8改訂版で何とか完成の域に達しました。

当時のドイツ国の技術水準に驚嘆するばかりです。

この依佐美送信所に関する技術面からの特徴を以下に列記します。

1。高周波発電機と高精度な回転数制御

高出力対策として幅広いドラム型回転子、バームクーヘン型の分割式固定子、通風と通水による冷却、ワードレオナード方式、機械加工技術、真空管を用いた平衡式検出回路による速度制御など。

2。トリプラーとキーイングチョーク

鉄芯の磁気飽和現象を利用したもので、電圧を故意に歪ませて(トリプラー)3倍の周波数成分だけを取り出すことで、発電機の周波数を3倍に変換したり、磁気飽和時にコイルの性能(リアクタンス)が極度に低下する現象(キーイングチョーク)を利用して、SPACE時に発電機の40%出力相当をタンク回路で消費すると同時に、アンテナ回路の同調を崩して送出電波を遮断させて、無接点式電力制御でキーイングを実現していました。

関係資料が無いために、試行錯誤で回路定数を組み替えて、矛盾無く動作する回路図となって、やっと機能を理解できました。

3。アンテナ線の並列配置とアース網の役割

「500KW の大出力と 250m の高いアンテナ」でヨーロッパへ送信できた・・・と説明されても、大規模なアース網の必要性が理解困難でした。

トップローディングやラジアルアース方式でも代行できるではないか?

このアース網は、単なるアース抵抗値の低減だけではないと思われてきました。

更には、アンテナ素子からは、実質どれほどの電波が放射されていたのか?

鏡像効果を生じることで、水平部のアンテナ素子が指向性を持った垂直偏波を出して効率よく通信に寄与したと推察します。

アンテナ線の並列配置で大出力が実現し、また、2万ボルト近い高電圧で放射することで高効率が実現しました。

4。鉄塔の構造

ピボット(球状)受座、対地絶縁方法、碍子の強度と保守管理、支線の張り方、台風対策など。

他に類のない特殊な構造で、理論的にも経済的にも無駄のない設計でした。

5。大掛かりな設備

世界遺産である「グリメトン送信所」と較べて、回転機械やコンデンサなど関連機材が多くて、複雑なシステムでした。

これは、単に送信距離が長いためばかりではなく、当時の送信所増加事情から周波数割当が厳しくなって精度の高い電波を送信する必要から、ワードレオナード方式が採用されたこと、並びに、高周波発電機のサイズ制限からトリプラー方式が採用されたからです。

建設当時の事情を知るほどに、送信設備設計の奥深さに驚嘆します。

過去の技術でありますが、後世の人間として興味あるテーマでした。

 

これらの興味ある技術を解り易くガイドできれば、工学に関係する来訪者が増加するのではないかと期待しています。

最後に申し添えますが、このレポートは筆者個人の責任で公開しています。

筆者が所属する「依佐美送信所ガイドボランティアの会」で公認されたものではありません。

その理由は、筆者の推察に基づく記述や作図が多項目に亙って存在するからです。

つまり、権威者の確認が得られてない現状では、間違った内容が拡散する可能性が高くて、後で訂正作業が生ずるからです。

この点から、確たる資料が発見されるか、権威者によるトレースが実現するまでは、非公式の解説として扱われます。

しかしながら、記念館をご訪問いただく皆さんへのガイドサービスを充実するために必要と思考して、敢えて公開しています。

 

2019年3月22日(第9改訂版)執筆者 水谷 彦一郎



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初版日時: 2018-08-18 (土) 19:36:48
最終更新: 2019-03-22 (金) 13:07:16 (JST) (2d) by hikoichi