彦市   » 依佐美送信所(改訂5版) » 運転・保守

昭和4年当時の産業実状を想定して、この依佐美送信所の運転と設備保守業務について推察を試みました。

以下は筆者の推察でシミュレートしたものです。

(筆者は、高圧・極低温プラントの運転・保守に携わった経験があります)

昭和4年の我が国は大型運搬機械や大型クレーンなどの無い時代でした。

高圧電力や高周波電力に使用できる計測器も限られていました。

熱電対型の電流計とコンデンサ型の電圧計が使用されたと思われます。

こんな実状では、正確なデータの採取が困難であるため、設備稼働時の測定記録類が少ないと思われます。

運転員は、操作盤の僅かな指示計器類と経験に頼って運転維持を実現していました。

更には、作業環境が厳しいことでした。

回転機械からの発熱と振動音で、室温は外気温度プラス15度ほどに上昇し、騒音が120フォンほどであったと思われます。

可聴周波数帯の5,400Hzの振動音や可聴周波数帯を僅かに超えた 17,400Hz の電磁波に曝され、しかも、500KWの高出力ですから、アンテナ下では頭髪が立つほどの強電界でした。

稼働時にあっては、精神的な負担も大きかったでしょう。

高価な機械設備であり、国家の威信が懸った送信所でした。

勿論、事前の技術教育や運転操作指導書が整えられてはいたでしょうが、操作を間違えれば故障に繋がります。

起動時は、負荷の最も少ない状態で、順次に回転機械を起動します。

例えば、起動準備(5分)→ 主電動機(3分)→ 直流発電機と電動機(5分)→ 高周波発電機(1分)→ トリプラー(1分)→ アンテナ出力調整(10分)→ 手動テスト(5分)

ざっと30分を要したのではないでしょうか。

以下に、起動時の操作を具体的に記します。

1。起動準備・・・動力部の運転系統、主電動機の起動レバー、直流発電機の励磁抵抗器の状態、高周波発電機の短絡バー、トリプラーの油循環バルブ、自動制御装置の電源投入などの確認作業。

2。補機の運転・・・給水ポンプ、潤滑油ポンプ、送風機、励磁機、など。

3。主電動機の起動・・・スイッチ投入して、回転音を聞きながら、水抵抗器のハンドルを回して抵抗値を減らしてゆき、規定回転数とする。その後に、スリップリングの短絡環レバーを操作する。

4。直流発電機、直流電動機、高周波発電機の運転状態、および、直流発電機の励磁電流を確認する。・・・(必要により励磁抵抗器をハンドル操作)

5。高周波発電機の短絡バーを外して、トリプラーへ送電する

6。トリプラーの起動・・・トリプラー用の励磁機を起動する。

7。高周波回路の安定を確認・・・アンテナ出力結合トランスまでの各部状態。発電機の回転数と出力電流、高周波回路の出力電流。

8。手動テスト・・・キーイング用の励磁機を起動する。「手動テストSW」を操作して、アンテナ出力電流計でキーイング・チョークの動作を確認する。

9。制御動作の確認・・・「手動テストSW」を「ローカル」にして、キー操作をして各部制御リレーの動作を確認する。

10。異常がなければ、「手動テストSW」を「リモート」に切り替える

保守作業では、パワーリレーの接点研磨、碍子の点検・清掃、アンテナ支線の点検、回転機の発熱や振動などですが、高電圧接近や高所作業を伴うので、緊張する作業でした。

鉄塔の頂上部まで登るのに40分を要しました。

夏期には電線やワイヤーロープが伸びるので、たるみが大きくなります。

このため、夏期に再調整する必要が生じると、炎天下の過酷な作業となります。

鉄塔に落雷すると避雷器が動作するので、落雷の翌日には、避雷器の点検・補修が必要でした。

日常点検では、アンテナ線と支線の状態、受電設備、給水・給油配管の漏れ、鉄塔基底部などが点検要所でした。

福利厚生面では、敷地内に社宅があって恵まれた環境であったと推察します。

機密漏洩防止の為でもあり、チームワーク強化にも繋がったと思われます。



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初版日時: 2018-05-11 (金) 14:10:05
最終更新: 2018-08-02 (木) 08:32:37 (JST) (19d) by hikoichi