彦市   » 依佐美送信所(改訂5版) » 輻射効率の算出

電力消費関係図.jpg

上図は、有効電力(電圧と同位相の電流値で表示)に注目した電力消費図です。

定常運転時を想定していますので、最大出力ではありません。

括弧の値が最大出力時に相当します。

高周波発電機の出力500KWで運転しています。

アンテナ回路の効率が30%であり、主電動機の出力800KWに対しては、利用効率が16%です。

電力消費関係図ー2.jpg

上図は、キーイングチョークが動作した状態の電力関係図です。

高周波発電機の出力が50%の 250 KW に低下しています。

 

輻射抵抗の計算式はアンテナの形式により、経験値に基づいた算出式があるようです。

超長波の逆L型アンテナでは、

輻射抵抗 = 1,600 x (he)2 / λ2   he : 空中線実効高 m λ : 波長 m

依佐美送信所に当てはめると、

空中線実効高 he = 198 m 、波長 λ = 300,000 / 17,442 = 17,200 m を代入すると、

輻射抵抗 Rr = 1,600 x 198 2 / 17,200 2 = 0.212 Ω

これにより輻射効率を計算すると、実績の空中線全抵抗は 1.19 Ω であり、

輻射効率 = 輻射抵抗 / 空中線全抵抗 の式より、0.212 / 1.19 = 0.178  17.8 % となります。 

公表されている輻射効率は約20%であったとあります。

これを上記図に適用すると、電波輻射電力が86KWとなります。

あまりにも効率が悪いので疑問に思い、私独自の見解で算出した値が上記の数値です。

以下に算出根拠を記します。

 

1。アンテナ回路の抵抗損失

アンテナの入力を Po = 430 KWとして、記録にある全抵抗値を Ro = 1.19 Ωとすると、アンテナ線への入力電流値 Io = √ (Po / Ro )で求められます。

アンテナ線が16 本に枝分かれしていますので、計算を容易にするため、1本あたりでは I = Io / 16 とします。

アンテナ線の抵抗値 R は、高周波の表皮効果と定在波における電流分布を考慮した値とします。

表皮効果を考慮する場合に、リッツ線を使用しているローディングコイルはロスが少ないので除外します。

定在波では、電流のパターンが固定しており、アンテナ線部の電流は先端部分ほど小さな値となっていますので、平均して実効値電流の60%が寄与するとして算出します。

電力損失は Ploss = ( 0.6 x I ) 2 x Ro

 

A。設置時(燐青銅撚り線 外径 10 mm )

Po = 430,000 W , Ro = 1.19 Ω , Rw = 2.1 Ω (アンテナ線の交流等価抵抗値)の条件により、

Io = 601 A , I = 37.5 A となり、アンテナ線1条あたりの電力損失は、  

Ploss =( 0.6 x I ) 2 x Rw = ( 0.6 x 37.5 ) 2 x 2.1 = 1,063 = 1.1 KW となります。

アンテナ全体では、Pl = 1.1x 16 = 17.6 KW となります。

 

B。戦後のアンテナ線 (銅クラッド鋼線 外径 4.2 mm 3条撚り線)

全抵抗値 Roが不明ですが、Po = 430 KW で推算します。

上記のA。と変わった事項はアンテナ線の Rw の値が2.1Ωから 1.57 Ω に変更になったことです。

アンテナ線16本が並列回路であるとして、全抵抗値を推算しますと、

全抵抗値が変化した量は、ΔR = ( 1.57 - 2.1 ) / 16 = - 0.033 Ω

従って、アンテナ線の電力損失は少し減少したと推察します。

 

C。複調式に改造後 (銅クラッド鋼線 外径 4.2 mm 3条撚り線)

ローディングコイルの巻数が15ターンから23ターンになったので、抵抗値も約 1.5 倍になりますが、リッツ線であるので、従来でも 0.2 Ω 程度であると推察して、0.3 Ω とします。

複調式になったので、アンテナ末端部にもローディングコイルが追加されたので、この分も含めて 0.4 Ω 加算して、

Rw = 1.57 + 0.4 = 1.61 Ω

全抵抗値 Ro = 2.6 Ω (記録にある値)

Po = 430,000 ,R o = 2.6 , Rw = 1.61 の条件により、

Io = 407 , I = 25.4 となり、アンテナ線1条あたりの電力損失は、  

Ploss =( 0.6 x I ) 2 x Rt = ( 0.6 x 25.4 ) 2 x 1.61 = 374 = 0.4 KW となります。

アンテナ全体では、Pl = 0.4 x 16 = 6.4 KW となります。

 

2。整合状態に於けるアンテナ放射電力の推定

アンテナ回路の全抵抗値から入力電流が推算できますが、アンテナが整合状態であれば、入力電流のすべてが有効電流です。

従って、給電点から供給された電力から電力損失分を差し引いた残り分が放射電力です。

超長波では、アンテナ線の長さに制約があって、ローディングコイル等でインダクタンスを調整しています。

実際に電波が放射されるのは、アンテナ線からであり、ローディングコイル等の挿入場所の違いで放射電力に違いが出ます。

つまり、アンテナ線部分の電流値分布が違ってくるからです。

ここでは、簡略法として、電力損失量を推算して、その残りを放射電力として輻射効率を推定します。

 

A。設置時(燐青銅撚り線 外径 10 mm )

固有波長は λ / 4 = 4,300 m , アンテナ線実長は 1,800 m , この差をローディングコイル等で補填することで整合条件を達成しています。

稼働時の入力電力 Po = 430 kw  全抵抗値 Ro = 1.19 Ω であるから、有効電流 Io = 601 A です。

アンテナ回路のエレメント一括高周波抵抗を16本の並列接続とみなして、Rw = 2.1 / 16 = 0.13 Ω とします。

アース抵抗は、環境条件から推察して Re = 0.7 Ωとしますと、

電力損失量は、Ploss = Io 2 x ( Rw + Re ) = 601 x 601 x ( 0.13 + 0.7 ) = 298,800 ( 299 KW )

アンテナ線から放射される電力は、

Pr = Po - Ploss = 430,000 - 299,000 = 131,000

輻射効率は、η = Pr /Po = 131,000 / 430,000 = 0.305  30.5 % となりました。

上記の計算式による効率 17.8 % との違いですが、水平部分のエレメントが垂直偏頗に寄与するかどうかの見解の違いにあります。

または、アース抵抗値の推測値の違いにあります。

上記の計算式は、過去の設備実績から導かれているものと推察しています。

 
 

C。複調式に改造後 (銅クラッド鋼線 外径 4.2 mm 3条撚り線)

稼働時の入力電力 Po = 430 kw  全抵抗値 Ro = 2.60 Ω であるから、有効電流 Io = 407 A です。

輻射効率が η = 24 % であったと記録がありますので、

放射抵抗 Rr = Po x η / ( Io x Io ) = 430,000 x 0.24 / ( 407 x 407 ) = 0.623Ω

アンテナ回路の一括高周波抵抗 Rw = 1.61 / 16 = 0.10 Ω 、その他回路抵抗 Rv = 0.206 Ω としてアース抵抗 Re を求めると、

Re = Ro - ( Rw + Rr + Rv ) = 2.60 - ( 0.10 - 0.623 + 0.206 ) = 1.671 Ω

 

つまり、複調式に改造して輻射効率は上昇しましたが、アース抵抗値は増加しました。

この複調式への改造は昭和 38 年ですが、その後の昭和 63 年に終端アースをラジアルアースに改修しました。

これによる効果は数値での記述がありません。

そこで、この改修後の輻射効率を推算してみますと、

仮にアース抵抗値が Re = 0.7 Ω まで改善されたとすれば、輻射抵抗値が 1.671 - 0.7 = 0.971 Ω 増加して、Rr = 1.594 Ω

Pr = Io 2 x Re = 407 x 407 x 1.594 = 264,050 W

この値は入力に対して、264,050 / 430,000 = 0.614 であり、輻射効率が61%と推察できます。



トップ   編集 差分 バックアップ 添付 複製 名前変更 リロード印刷に適した表示   ページ新規作成 全ページ一覧 単語検索 最新ページの一覧   ヘルプ   最新ページのRSS 1.0 最新ページのRSS 2.0 最新ページのRSS Atom Powered by xpWiki
Counter: 29, today: 1, yesterday: 0
初版日時: 2018-05-11 (金) 12:57:16
最終更新: 2018-08-02 (木) 08:24:39 (JST) (19d) by hikoichi