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[目次]

A. コイルのインダクタンス

B. アンテナの自己インダクタンス

C. アンテナの対地静電容量

D. アンテナの等価回路

E. バリオメータ型コイルの結線

F. コンデンサの容量計算

G. トリプラーの計算

H. キーイング・チョーク及びタンク回路の計算

 

A. コイルのインダクタンス

1.バリオメータ型高周波コイル

仕様 内筒・・・直径 1.2 m 巻き数 10 横方向長 1.1 m 空芯   

   外筒・・・直径 1.5 m 巻き数 10 横方向長 1.2 m 空芯

計算式  L = KμS (n x n) / W (単位 H )

L:インダクタンス、K:長岡係数、 μ:空気中の透磁率、S:断面積、n:巻き数、W:横方向長  

内筒の L = 0.9 x 4π x 10 -7 x ( 0.6 x 0.6 x π)x 10 x 10 / 1.1 = 120 x 10 -6 = 120 μH

外筒の L = 0.9 x 4π x 10 -7 x ( 0.75 x 0.75 x π ) x 10 x 10 / 1.2 = 167 x 10 -6 = 167 μH

2.ローディングコイル

仕様  開設時・・・・・・直径 3.0 m 巻き数 15  横方向長 1.5 m 空芯      

    戦後の改造時・・・直径 3.0 m 巻き数 23  横方向長 2.5 m 空芯

計算式  L = KμS (n x n) / W (単位 H )

開設時の L = 0.9 x 4π x 10 -7 x (1.5 x 1.5 x π)x 15 x 15 / 1.5 = 1.20 x 10 -3 = 1.20 mH

改造時の L = 0.9 x 4π x 10 -7 x (1.5 x 1.5 xπ)x 23 x 23 / 2.5 = 1.69 x 10 -3 = 1.69 mH

増設分(アースコイル)の L = 0.9 x 4π x 10 -7 x (1.5 x 1.5 xπ)x 33 x 33 / 3.0 = 2.90 x 10 -3 = 2.90 mH

注:資料によれば、アースコイルのインダクタンスは 2.58 mH となっています。上記の計算値 2.90 mH は、横方向長の 3.0 m が推量値であり未確認のため、等価回路の表示には 2.58 mH を使います。

B. アンテナの自己インダクタンス

仕様  長さ 1,800 m 地上高さ 230 m 

計算式

23y39-3.jpg

L:アンテナ線の自己インダクタンス(単位は H / m)、μo:真空の透磁率 = 4π x 10 -7、 μs:銅の比透磁率= 1 、 log e:o.4343 、h:アンテナ線の地上高 m 、r:銅線の半径 m、H : 鏡像効果の地下深度 m (依佐美では H = 200 として試算)

1.開設時 (燐青銅撚り線 外径 10 mm )

 Lw = 4π x10 -7 / (4π) [ ( 1 / 2 ) +2 x log { 2 ( 230 + 200 ) / 0.005 } / 0.4343 ]

= 1 x 10 -7{ 0.5 + 4.6 x log ( 0.86 x 10 3 / 5 x 10 -3 )} = { 0.5 + 4.6 x log ( 1.72 x 10 5 ) } x 10 -7

= { 0.5 + 4.6 x log ( 1.72 x 10 5 ) } x 10 -7 = ( 0.5 + 4.6 x 5.2355 ) x 10 -7 = 24.1 x 10 -7 = 2.41 x 10 -6 = 2.41 μH / m

アンテナ線1本当りでは、 L1 = 1,800 x 2.41 x 10 -6 = 4.34 x 10 -3 = 4.34 mH

2.アメリカ軍使用時 (複調式で、銅クラッド鋼線 外径 4.2 mm 3 本撚り)

 Lw = 4π x10 -7 / (4π) [ ( 1 / 2 ) + 2x log { 2 ( 230 + 200 ) / 0.0035 } / 0.4343 ]

= { 0.5 + 4.6 x log ( 0.86 x 10 3 / 3.5 x 10 -3 )} x 10 -7 = { 0.5 + 4.6 x log ( 2.46 x 10 5 ) } x 10 -7

= ( 0.5 + 4.6 x 5.3909 ) x 10 -7 = 2.53 x 10 -6 = 2.53 μH / m

アンテナ線1本当りでは、 L1 = 1,800 x 2.53 x 10 -6 = 4.55 x 10 -3 = 4.55 mH

 

C. アンテナの対地静電容量

計算式

23y40-2.jpg

C :アンテナ線の対地静電容量(単位は F / m )

εo : 空気中の誘電率 8.853 x 10 -12  

その他の記号は自己インダクタンスの計算式と同じです。

1.開設時

C = 2π x 8.853 x 10 -12 x 0.4343 / log { 2 ( 230 + 200 ) / 0.005 )} = 24.15 x 10 -12 / log ( 0.86 x 10 3 / 5 x 10 -3 )}

= 24.15 x 10 -12 / log (1.72 x 10 5 ) = 24.15 / 5.2355 x 10 -12 = 4.61 x 10 -12 F / m

 アンテナ1本については、 C1 = 1,800 x 4.61 x 10 -12 = 8.30 x 10 -9 = 0.0083 x 10 -6 = 0.0083 μF

1 本で 0.0083 μFですから、単純に16 本分を合計すると 0.133 μF となります。

記録では、アンテナ全体の静電容量が 0.054 μF であったとあります。

この差(2.5 倍)について考察しますと、現実のアンテナ線では支持金具、吊架線、分散化、架線のたるみ、鉄塔などの複雑な要素がからんでいます。

従って、理論値からは大きくずれています。

設計時には、この実績値との差については織り込まれていたものと推察します。

2.アメリカ軍使用時 (複調式で、銅クラッド鋼線 外径 4.2 mm 3 本撚り)

C = 2π x 8.853 x 10 -12 x 0.4343 / log { 2 ( 230 + 200 ) / 0.0035 )} = 24.15 x 10 -12 / log ( 0.86 x 10 3 / 3.5 x 10 -3 )}

= 24.15 x 10 -12 / log (2.46 x 10 5 ) = 24.15 / 5.3909 x 10 -12 = 4.48 x 10 -12 F / m

 アンテナ1本については、 C1 = 1,800 x 4.48 x 10 -12 = 0.0081 x 10 -6 = 0.0081 μF

1 本で 0.0081 μFですから、単純に16 本分を合計すると 0.130 μF となります。

記録では、アンテナ全体の静電容量が 0.06 μF であったとあります。

この差(2.2 倍)については、上記の考察と同じ理由です。

 

D. アンテナの等価回路

アンテナ線部分は下図の如く、大地に対してはインダクタンスとキャパシタンスの分布回路です。

これの計算が困難であるので、集中配置として近似したものを便宜上で等価回路とします。

従って、高周波回路では、計算値と実測値に大きな開きがありますことをご承知ください。

23y81.jpg

1.開設時

23y100[1].jpg

上記の数値は次のようにして求めたものです。

Cw = 0.054 , L6 = 1.20 , T2 = 121 ・・・資料からの転記です。

Lw = 271 , Rw = 0.13 , Ls = 20 , L5 = 70 ・・・理論的に推算です。

2.複同調式で使用時

23y101[1].jpg

上記の数値は次のようにして求めたものです。

Cw = 0.06 , L6 = 1.59 , T2 = 121 , L5 = 409 , L7 = 2.58・・・資料からの転記です。

Lw = 284 , Rw = 0.13 , Ls = 20 ・・・理論的に推算です。

 

E. バリオメータ型コイルの結線

2つのコイルを重ねて使用出来る構造のバリオメータ型コイルでは、結線方法によって、合成インダクタンスが大幅に変化します。

外筒コイルのインダクタンス = La  

内筒コイルのインダクタンス = Lb とすると、

L = ( La + Lb - 2M ) ~ ( La + Lb +2M ) の範囲で変化します。

ここで、M とは 相互インダクタンスで、La と Lb の加重平均値に結合係数 K を掛けた値です。

K = 0 ~ 0.6 の範囲を採るとして、具体的に試算しますと、

La = 167 μH

Lb = 120 μH

M = K √ ( 167 x 120 ) = K x 142 = ( 0 ~ 0.6 ) x 142 = 0 ~ 85 μH

L = ( La + Lb - 2M ) ~ ( La + Lb +2M )

L = { ( 167 + 120 ) - 2 x ( 0 ~ 85 ) } ~ { ( 167 + 120 ) + 2 x ( 0 ~ 85 ) }

L = { 287 - ( 0 ~ 170 ) } ~ { 287 + ( 0 ~ 170 ) } = 117 ~ 457 μH

調整方法は、内筒コイルの結線を逆接続すると、相互インダクタンスがマイナス(減算)になり、同方向接続すると、相互インダクタンスがプラス(加算)に作用します。

バリオメータ型コイルでは、重ね合わせる度合いにより相互インダクタンスが変化します。

内外コイルユニットのすきまが固定されていますから、完全に重ね合わせた状態で結合係数 K = 0.6 です。

上記はコイルを直列に接続して可変インダクタンスとした場合ですが、外筒コイルと内筒コイルで結合回路とした場合では、入力側に外筒コイルを、出力側に内筒コイルを接続します。

この場合の相互インダクタンスの影響は、相手コイルのインダクタンスに結合係数 K を掛けた値がマイナス(減算)に作用します。

 

F. コンデンサの容量計算

計算式

23y43.gif

 C:誘電体1枚当たりの容量 F                      

 S:誘電体の表面積 m2

 d:誘電体の厚さ m                      

 εo:8.854 x 10 -12                     

 εs:誘電体の比誘電率 雲母=(4.5 ~7.5 )ここでは、平均値で6とします。

誘電体の寸法を25cm角で厚み2mm、極板厚み1mmと仮定すると、

S = 6.25 x 10 -2 ,  D = 2 x 10 -3 ,  εs = 6 となって、

C = 8.854 x 6 x 6.25 x 10 -14 / 2 x 10 -3 = 1.66 x 10 -9

例えば、仕様値の 0.1 μFのコンデンサであれば、

n = 0.1 x 10 -6 / 1.66 x 10 -9 = 60.2

60 枚重ねたスタックとなる。

この高さは、(2 + 1)x 60 = 180 mm となる。

 

G. トリプラーの計算

1.鉄芯とコイルの形状

鉄芯は、厚さ 0.1 mm のドーナツ型の珪素鋼板が4,700枚で構成されていたと記録にあります。

そこで、外径が 30 cm, 内径が 20 cm の積層鉄芯と推察します。

また、コイルの形状、太さ、巻数は 下 図に示した状態と推察します。

コイル間の相互干渉を減らすために、起動コイルは鉄芯をくぐって巻かれており、メインコイルは鉄芯周囲に巻かれています。

トリプラー.jpg

2.起動用励磁コイル

鉄芯の飽和磁束密度 Bs = 2.2 T (テスラ)、励磁コイル電圧 V = 30 V、励磁電流 I = 400 A として

計算式   H = (n x I) / (2π x R)    H : 磁界 A/m,  n : コイル巻数,  I : 励磁電流 A, R : 鉄芯の相当半径 m   

      B = μo x μs x H    B : 磁束密度 Wb / m2 , μo : 真空の透磁率 = 4π x 10 -7 Wb / Am , μs : 鉄芯の比透磁率 = 1,000

R = √ ( 0.25 2 + 0.025 2 ) = 0.25

B = 4π x 10 -7 x 1,000 x 400 x n / ( 2 x 3.14 x 0.25 ) = 0.32 n  

Bs < B であるためには、n > Bs / B = 2.2 / 0.32 = 6.9 → 8巻とします。  

 

3.メインコイル

回路常数の関係で、空芯状態のインダクタンスを407 μH とするには、

計算式       

 L = K x μo x S (n x n) / W  W : コイルの横方向長さ 0.5 m, S : コイル内側の断面積 0.07 m2, K : 長岡係数 0.7 , μ0 : 4π x 10 -7

L = 0.7 x 4π x 10 -7 x 0.07 x ( n x n ) / 0.5 = 0.123 n 2 μH → 445 μH とするには、

 n = √ ( 445 / 0.123 ) = 60.1 → 60巻とします。

 

また、メインコイルの電流で磁気飽和させる為に必要な電流値を求めると、

 Bs < B とする必要があるので、

 電流 I > 2.2 / ( 4π x 10 -7 x 1,000 x 60 ) = 29.2 A

 

4.コイルの太さ

 メインコイルには、最大出力時において 375 A 流れるので、100 mm2 の軟銅撚り線とします。

  起動コイルには、400 A 流れるので、150 mm2 の軟銅撚り線とします。

 

H. キーイング・チョーク及びタンク回路の計算

1.制御コイル

鉄芯の構造およびサイズはトリプラーと同様とします。

前述のトリプラーのコイルと同様の計算式で、 V = 220 V 、I = 平均値 13 A 、Bs = 2.2 T、  

B = 4π x 10 -7 x 1,000 x 13 n = 0.0163 n

 B > Bs の条件になる最低巻き数を求めると、

 n = Bs / B = 2.2 / 0.0163 = 135.0 であるが、余裕を持って n = 150 巻とします。

2.タンク回路コイル

2次側のタンク回路が出力周波数に同調すると、アンテナ回路の電流が流れ込みます。

トリプラーの機能と異なり、タンク回路を流れる電流で磁気飽和が生じないように設計されました。

そこで、回路定数の関係から、タンク回路コイルのインダクタンスが 5.6 μH になる巻数を逆算しますと、

計算式       

 L = K x μ x S (n x n) / W  

W : コイルの横幅 0.00785 m, S : コイル内側の断面積 0.05 m2, K : 長岡係数 0.7 

空芯状態 L = 0.7 x 4π x 10 -7 x 0.05 x ( n x n ) / 0.00785 = 5.6 μH → n = 1巻となります。

タンク回路コイルには、最大900 A 流れますので、磁束密度を試算しますと、

B = 4π x 10 -7 x 1000 x 1 x 900 = 1.13

Bs = 2.2 ですから、Bs > B の条件が成り立つので、タンク回路電流で磁気飽和することはありません。

 

3.コイルの太さ

 タンク回路コイルには、最大出力時において 900 A 流れるので、500 mm2 の軟銅撚り線とします。

 制御コイルには、13 A 流れるので、5.5 mm2 の軟銅撚り線とします。

 

キーイングチョーク.jpg

4.タンク回路の定数決定

下図は、昭和 40 年 11 月の実測データを参考として、筆者が一部修正した信号注入回路です。

キーイングチョーク動作時.jpg

同調条件は、2π x f 3 x ( Lk + Lh ) = 1 / ( 2π x f 3 x Ck )  Lk = 5.6 μH  Lh = 92.3 μH  Ck = 0.855 μF f 3 = 17,442 Hz

XLk = 2π x 17442 x 5.6 x 10 -6 = 0.6 Ω

XLh = 2π x 17442 x 92.3 x 10 -6 = 10.1 Ω

XCk = 1 / ( 2π x 17442 x 0.855 x 10 -6 ) = 10.7 Ω



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初版日時: 2018-05-11 (金) 13:01:48
最終更新: 2018-08-18 (土) 18:18:41 (JST) (2d) by hikoichi