彦市   » 依佐美送信所(改訂5版) » 信号注入回路

設置当時から、ヨーロッパ諸国とモールス信号で通信していました。

記録によると、毎分 150 語でモールス信号を自動送信した記録がありますので、1秒間に 約 13 回近い On-Off 操作となり、負荷補償用のリレーが1秒間に 13 回も動作を繰り返していたようです。

キーイングチョーク動作時.jpg

上図は、信号注入回路のキーイングチョーク動作時の回路図です。

これは、信号送出待機時とモールス信号のSPACE時(キーがオフ)の状態を示しています。

信号送出の待機状態では、直流発電機の励磁電流を減少して直流出力は 300 KW ( 50 % ) となり、高周波発電機の出力は 220 KW (45%) となります。

また、アンテナ回路が非同調状態であり、アンテナからの出力は4 KW 、約 3 %にダウンした状態です。

信号 キーオフ時(SPACE ) でも同様ですが、キーイングチョークに 13 A 程の直流が流れて、鉄芯を磁気飽和状態とします。

この磁気飽和により、コイル LK のインピーダンスが空芯状態での値 5.6 μH となり、タンク回路が送信周波数に共振した状態になります。

タンク回路が同調状態になると、キーイングコイル(空中線結合コイル)の相互インダクタンスの作用で、1次側のコイルインダクタンスが低下してアンテナ回路の同調状態を崩してアンテナ素子への電流が低下すると同時にタンク回路の2次側に電圧を誘起します。

従って、このタンク回路は等価的に 0.25Ω / 250KW の抵抗 RK のみとなっていますので、流入した電力は空冷式無誘導抵抗器で無駄に消費されます。

この状態のアンテナ給電は 200 KW 出力を出しており、アンテナ回路で 10 KW の損失があり、残りの 186 KW はこのタンク回路の抵抗器で消費されて熱となります。

キーイングチョーク停止時.jpg

上図は、信号 キーオン時(MAKE時 ) のアンテナ回路状態を示しています。

アンテナの整合状態を17,442Hz に対するインピーダンス値を併記してあります。

信号 キーオン時は、励磁電流を遮断するので、キーイングチョークの磁気飽和が無くなり、キーイングチョークのインピーダンスが急上昇します。

従って、信号注入のタンク回路は高いインピーダンスで開放状態となります。

同時に、直流発電機の励磁電流が増加され直流出力は 600 KW ( 100 % ) となり、高周波発電機の出力は 500 KW (100%) となります。

アンテナ側のループ状の等価回路において、コンデンサーの183Ω がコイルのインピーダンス合計値と等しくなっています。

従って、アンテナ回路へ送られた電力は抵抗分で消費されます。

電流計は600A を示し、電圧は715V となり、出力 430 KW の状態です。(出力100% )

ここで、Rw はアンテナエレメントの抵抗値であり、47 KW が発熱となります。

また、Re はアース抵抗値であり、250 KW が無駄に消費されます。

Rr が等価的に表示した輻射抵抗値であり、130 KW が電波の放出に寄与します。

即ち、信号送出時には、発電機の負荷変動が 50 %と100 %の 2 値間で激しく変動します。

アンテナの信号出力は、Off - 3 % , On - 100 % の断続信号となります。

ここで、アイドル時(SPACE) に 200KW という大きな電力を無駄に使っていることについて、説明します。

1つは、高周波発電機の負荷変動量の追従性からの対策です。

高周波発電機の負担を減らす目的で、タンク回路で 186KW(43 %) を消費することで発電機の負荷変動を 500KW(100%) ー 220KW(45%) の2値変動とすることで、変動幅を50%と狭くして制御を容易にしています。

また、回転子の重量が大きいので「はずみ車効果」も寄与して規定回転数を維持できました。

もう1つは、トリプらーからの制約です。

電流値が低下すると磁気飽和状態が維持が心配ですが、45%の負荷であれば磁気飽和状態を継続できました。

 

この様な動作で、MARK(マーク)時とSPACE(スペース)時のアンテナ出力を 130KW(100 %) ー 4KW(3 %)と2値変動をすることで信号注入を実現します。

 

また、タンク回路の時定数は t = Ck x Rk = 0.855 x 10 -6 x 0.25 = 0.213 x 10 -6 秒であり、

5 t = 1 x 10 -6 秒であり、信号波形に影響を及ぼすことはありません。

この回路定数であれば、高速度なキーイング操作に同期して、アンテナから電波が放射されることが理解できます。

ただし、信号送出待機時には、スペース状態となりますので、タンク回路で大きな電力を消費しています。

このため、信号送出作業は、相手国別スケジュールに従って定時通信を行うことで効率のよい運用が行われていたと推察します。

下記の項目をクリックすると関連説明があります。

5-10.キーイングチョークの構造

5-11.コンデンサの構造


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初版日時: 2018-05-11 (金) 12:49:06
最終更新: 2018-05-11 (金) 14:59:19 (JST) (10d) by hikoichi