彦市   » 依佐美送信所(改訂5版) » アンテナ線の電流分布と電波放射

まず先に、アンテナから電波を放射する条件を考えてみます。

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上図は、標準型ダイポールアンテナの構成図です。

アンテナの回路を共振状態に調整して、共振する特定の高周波電源を結合すると、送電部の2極端子(給電点)からアンテナと大気空間の僅かなコンデンサー容量を通して電気的に閉回路が形成されます。

そして、周波数に対して、アンテナ部が「同調状態」にあると、アンテナ上の波形が同じ形で繰り返されます。

この状態を「定在波」と呼ばれて、アンテナ部では、大気空間に半波長の磁力線を放出します。

これは、電気エネルギーを磁気エネルギーとして大気中の放射することです。

「高周波電源」でなければ、大気空間の僅かなコンデンサー容量と同調回路を形成することができません。

図の如く、送信する電波にたいして、4分の1の長さのアンテナ素子2本を垂直にして給電すると、アンテナ素子間で2分の1の波長の電磁波が放射されます。

そして、次の半サイクルで、逆位相の電磁波が放射されます。

この繰り返しで、空中360度の方位に電波が伝わります。無指向性)

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上図は、一般的な垂直ダイポールアンテナの構成図です。

1本の垂直アンテナ素子と接地抵抗値の低いアース極に給電すると、大地があたかも鏡の如く作用して(鏡像効果)、アンテナ素子と大地との間に2分の1の波長の電磁波が放射されます。

しかし、電波の波長が長くなるほどアンテナの高さが高くなります。

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上図は、逆L字アンテナの構成図です。

アンテナ素子がながくなり、地表に平行な部分が長くなっています。

このばあいは、大地と平行なアンテナ素子に対応させて、地表にスクリーン・アース極を設置します。

すると、アンテナ素子の水平部分では大地に対して垂直な電磁波が放射されます。 この場合は、アンテナ端末部が最も電磁波が弱く、給電点に向かって、傾斜した分布になります。

この結果、給電点方向に電磁波の密度が集積されて指向性が生じます。

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上図は、依佐美送信所のアンテナ個性図です。

超長波で高出力ですので特別な考慮が払われていました。

4分の1波長が 4,300m ですので、アンテナ素子の展張が困難です。

そこで、ローディングコイルを挿入してインダクタンスを付加することで、アンテナ素子の短縮を図りました。

しかし、ローディングコイルからは電波の放射ができませんので、放射効率が極度に低下しました。

そこで、高出力で対処することになり、大きな電流を流すことになりました。

ここで問題になることは、太い電線では自己インダクタンスの値が小さくて共振回路が形成できません。

従って、16本のアンテナ素子に分散して、電流値を少なくして細い電線をs使いました。

これにより、自己インダクタンスが増大し、かつ、大地との静電容量も増大しました。

更には、250m の高い鉄塔は建設費が高く、出来るだけ本数を減らすために設置間隔を大きくしました。

すると、アンテナ素子のたわみ量が大きくなり、強風時の線間接触が生じないような線間距離として 18m が必要でした。

この結果、、アンテナの敷設面積が 500m x 1,400m となりました。

そのため、広範囲のアンテナ投影面積に編み目状のマルチ・アースを設置しました。

この結果、逆L字アンテナとして機能させることができました。

 

次に、アンテナの電力損失について考察します。

高出力の送信所では、電力損失を抑える対策が重要です。

損失の主なものは、アース抵抗とアンテナ線の抵抗によるものです。

アース抵抗値を下げるための完璧な対策をしても、0.7 Ω 前後が限度と推察します。

他方、アンテナ線の抵抗値は、表皮効果による抵抗増大があります。

更に、アンテナ線の効果を高めるには細い線が好ましいのですが、強度上や交流抵抗値からの制約があります。

このアンテナ線での損失はジュール熱となって、アンテナ線の温度上昇になります。

 

次に、逆L型アンテナの電波放射について説明します。

一般に、アンテナ回路では、アンテナ素子を「同調状態」(チューニング)として、「定常波」が発生する状態で電波が放射(受信)されています。

この同調状態では、コイル成分(磁力線密度によるエネルギー貯蔵能力)とコンデンサー成分(電界密度によるエネルギー貯蔵能力)が同じになって、共振状態となります。

この共振状態を維持できる周波数に限っては、エネルギー貯蔵能力の限界を超えた余剰のエネルギーが空中に放射されます。

送信アンテナは電波を放射する機能を持ち、受信アンテナは電波を選別して同調するエネルギーを吸収する機能を持ちます。

高周波電流がアンテナ線を流れる時は、アンテナ線の自己インダクタンス磁気エネルギーとして蓄える)と大地との分布静電容量電気エネルギーとして蓄える)との間で1/4 波長毎にキャッチボールしています。

このキャッチボールによるエネルギーが高まって、電波となって大気中に飛び出しているのです。

この現象は、あたかも水面に石を投じて出来る波紋の如くに、光と同じ速さで外へ外へと拡がります。


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初版日時: 2018-05-11 (金) 12:56:43
最終更新: 2018-04-20 (金) 20:29:06 (JST) (31d) by hikoichi