彦市   » 二宮尊徳 » 度外の推譲

要約です。

勤倹を奨励して貯蓄させることを勤倹貯蓄と言います。

貯蓄を否定する人は別ですが、これは、単に財産を蓄えることが目的です。

分度の方法は、単なる蓄財だけが目的ではないので、勤倹貯蓄とは言わず勤倹推譲と言います。

教えには、推譲の定義があり、一部を子孫に譲り、一部を他人に譲ることです。

子孫に譲る分を自譲と言い、他人に譲る分を他譲と言います。

自譲は誰もが実行しようとしますが、必ず実行できるものでもありません。

ましてや、他譲については、言うまでもありません。

一般には、貧者が家を建てることは稀であり、富者が末長く富者であり続けられません。

人は、自然災害を恐れますが、天地の変動には逆らえません。

疾病や戦乱も同様に恐れられる事ですが、これら人事の変動も避けられません。

これらの事変が毎年発生するとは限っていませんが、これら不慮の災害に備えなければなりません。

翁は「世の中で事変が起こるが、これに対処できる方策があれば、事変が起こらないのと同じ結果となるが、備える力が無い場合には、大変な事になる」と言われました。

また、「私の教えは、単に倹約だけを目標にするのではなく、事変に備える為でもある」と言われました。

分度を立てて余財を貯蓄する目的は、自譲によって、災害に備えたり子孫に財産を残すことですが、貧夫の中には守銭奴に陥る者がいます。

貯蓄することは結構なことですが、私たちの道理では、他譲することが最も尊いのです。

他譲の徳は、盗賊に奪われないし、水害や火災で消滅しないし、噴火や津波で持っていかれる事もありません。

また、子孫がこれを消費することもできません。

高位の人から褒められたり、周囲から高い評価を受けて幸福な気持ちになれるのは、この他譲の結果です。

翁の一生では、自譲は無くて、すべて他譲でした。

この為に、翁の行動が日毎に著名になり、その教えは年々広がり、今では、天下を満たす程になっています。

これが、他譲の徳です。

報徳会と類似した組織が全国にありますが、布施や善行を奨励しても、実際の行動ができる団体は僅かでしょう。

これは財源が集まらないからです。

報徳会では、度外の財源を資本としていますので、他の団体と違います。

分度法を採用しないで、単に他譲を見込んだとしたら、返ってくる利益が無いとして協力されないでしょう。

これは、他譲の本質的利点が理解されていないからです。

翁の言葉に「盤中の水は手を以て彼に押せば、流れて我に来たり。我に掻き寄すれば、流れて彼の帰し去る」とあります。

この教訓は、即ち、奪って益なく、譲って損なきの理屈を比喩されたのです。

他譲は、積善の種であり、陰徳(目立たぬ善行)の母です。

他譲が無いと、陰徳や積善を実行できなくなり、分度を計画しても効果が出ません。

翁が言われたのは、多くの人は、分度の思想は専ら積財を狙ったものだと言いますが、そうではなく、困っている人を救って、世の中を改善することにあります。

このことをしっかりと認識してください。

更には、他譲による活動は、陽報(目立つ評価)を目的とした陰徳ではありません。

布施や積善は、自分の為に行うのではないからです。

元来、他譲の資金は、生活費を余して他人に向けて譲ったのですから、自分の財産ではありません。

人道の本分としての浄財です。

実際には、報徳には陽報が伴ってきますが、分度の道理では陽徳を望んではいません。



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初版日時: 2017-11-28 (火) 19:36:45
最終更新: 2018-02-15 (木) 15:20:19 (JST) (4d) by hikoichi