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2015年12月28日

 国家に戦争はつきものだとか、国家は戦争する装置だといわれる。

昔は、領主や国王が持つ領土拡張欲が戦争を生んだが、フランス革命後、世界のすべての国が「国民国家」(もしくはその擬似的なかたちである社会主義国家など)の形式を採るようになり、戦争が持つ意味も変わった。

欧州や中南米などを見ると、19世紀に国民国家群が形成されたとき、英国が仕切った国際的な談合によって国土が重複しないように配置され、領土紛争が戦争に発展しにくい仕組みになっている。 (覇権の起源)

(フランス革命後、国民国家という巨大なちからを持つ装置が創設されたが、独裁的な権力を民主的に得たナポレオンがめざしたのは、戦争による全欧州征服だった。こうした国民国家が持つ暴力性を封じ込めるため、諸帝国間で談合しつつナポレオンを破った英国が作ったのが、英国と同じぐらいの大きさの国民国家を世界中に無数に作り、大きな国が小さな国を戦争で征服することのないようにした上で、世界中を国民国家にすることだった。中国やブラジルといった大きな国は、英国が分割できなかった末の産物だ)

 だがその後も、国境線をめぐるわずかな土地の紛争をめぐり、隣接する諸国間の戦争や対立が世界中で延々と続いている。

その理由は、戦争が、最も手っ取り早い国民国家装置の加速手段だからだ。

力づくで領土民を支配していた封建国家と異なり、国民国家は領土民を「国民」と名づけ「主権在民」「国家の主人」とおだててその気にさせ、国家のもとにすすんで結束させ、喜んで国家に貢献させてタダ働きさせ、納税や兵役をさせることが不可欠だ。

国民がその気になって(だまされて)愛国的にがんばるほど、国民国家は成功する。

 国民国家の結束を、最も簡単に促進できるのが「戦争」を使ったナショナリズムの扇動だ。

「震災復興」や、五輪など「スポーツ」も、国民の結束を加速できる(だからプロパガンダ機関であるマスコミはこれらのテーマを好む)。

だが「他国の脅威」を煽る方が効率が良い。

世界のすべての領土紛争は、為政者が必要なときに国家を結束させるための道具として、わざと解決せずに残してある。

「両国がその海域にこだわるのは海底油田があるからだ」などという解説は、大体が目くらましの誇張である。

 世界の国民国家体制は、ナポレオン戦争の教訓から、英国主導の国際談合によって戦争が起きにくいように工夫して作られたが、フランス革命と同時期に起きた産業革命後の100年間の経済成長期が終わり、世界経済が行き詰まると、各国の為政者が無茶をするようになって二度の大戦が起きた。

戦争の末に、覇権国が英国から米国に移転した(米国は、覇権をもらう条件で参戦した)が、英国は戦後の米国の覇権戦略の黒幕になろうと画策して米ソ冷戦を誘発し、第二次大戦の戦時体制がそのまま冷戦体制に受け継がれた。

その結果米国は、好戦的な「軍産複合体」が権力中枢に居座り、マスコミや議会も軍産の影響下に置かれ続けた。

米国は、戦争装置に取り付かれた状態で覇権国を続け、米国がやる戦争はすべて軍産によって長期化(泥沼化)の罠を仕掛けられた。

 米国の歴代の大統領たちは、軍産の支配から逃れようともがいた。

若いケネディは、直截的にソ連と和解しようと試みて殺された。

まっすぐやってはダメだ。

むしろ逆に、軍産が好む策を過激、過剰にやってわざと失敗させ、失敗からの挽回と称して軍産が作った体制を壊す方がうまくいった。

ベトナム戦争失敗後のニクソン政権による中国との和解や、ソ連敵視を強めると言いつつソ連を和解して冷戦を終わらせたレーガン政権がこの例だ。

米国が軍産の支配を乗り越えるには、中国やロシアを引っ張り上げ、世界の覇権構造を多極化するのが一つの手だ。

イラク侵攻後の現状も覇権を自滅させており、この手法といえる。ご存じのとおり、ニクソンやレーガンらの手法を、私は「隠れ多極主義」と呼んでいる。

 1980年代に冷戦が終わる過程で、覇権の黒幕だった英国は、覇権の主役を軍事から経済(金融)に切り替え、米国(米英)が債券金融システムの拡大(バブル膨張)を主導して巨額の富を創造し、その資金力で世界支配を続ける金融覇権体制を作ってそちらに移行した。

同時期に、英国が見捨てた軍産にとりついて米国の覇権中枢に入ったのがイスラエルで、冷戦直後の湾岸戦争(イラクをクウェート侵攻に誘導し、それを叩いた)が「軍産イスラエル」合弁の初仕事だった(79年のイラン革命などもイスラエルの影があったが)。

軍産イスラエルは米軍をイラクに長期駐留させ、イスラエルの番犬として機能させたかったが、当時のパパブッシュ政権はそれを回避し、イラク軍をクウェートから追い出しただけで、米軍をイラクに入れなかった。

 次のクリントン政権は金融覇権重視で軍産イスラエルに冷たかったが、その次の息子ブッシュ政権ができた直後、軍産イスラエルは911テロ事件を誘発して華々しく政権中枢に返り咲き、現在まで続く「テロ戦争」が始まり、米国は劇的に好戦的な軍事主導に戻った。

911は、米国の覇権戦略の主導役を乗っ取る「クーデター」だった。

 テロ戦争の戦略は、1980年代からの「金融覇権体制」に対する配慮がある。

一般の戦争は国家間で経済を潰し合うことであり、戦争を世界規模でやると世界経済が破壊される。

20世紀の二度の大戦のころは、世界で経済成長する地域が限定されており、その地域の全体の成長が鈍化した後、大戦でいったん全部を破壊して再建する「リセット」のために起こされたなどと説明されている。

対照的に冷戦後の世界は、BRICSなど新興市場諸国に成長力があり、世界経済の成長余力がかなり大きい。

現状で国家間の世界大戦が起きると、米欧(先進国)と中露(新興市場)の戦いになり、今後の世界経済の成長の原動力となる中国など新興市場が破壊されてしまう。

これでは資本家の賛成を得られない。

 テロ戦争は、軍産系の諜報機関が間接的に育てたテロリストたちが、世界のどこかでテロをやり続け、それを取り締まるためと称し、米国や同盟諸国の軍隊が、テロリストの本拠地とされるイスラム世界のどこかの国で戦争し、長期駐屯する戦略だ。

テロ戦争がらみで戦争が行われたアフガニスタンやイラクは、いずれも内戦や経済制裁で事前に経済が破壊されており、そこで戦争が行われても追加的に破壊されるものが少なく、世界に対する経済的な悪影響が少ない(ものすごく悪くて下品な言い方をすると、アフガニスタンやイラクは「戦争の公衆便所」だった)。

その意味でテロ戦争は、資本家をも納得させられる。

 テロリストは、米国の諜報機関の傘下で涵養され、米イスラエルの都合の良いときに、都合のいい場所でテロをやらせられる。

テロ戦争は低強度で、永久に続けられる。

CIAは、テロ戦争が40年続くと吹聴していた。

戦争構造が続く限り、政府は有事体制をとり続け、マスコミは当局の言いなりの報道を続けるし、反戦的、反政府的な言論を非国民扱いして排除できる。

軍産にとって非常に都合のいい「理想的」な戦争戦略だ。

 テロ戦争の中で、テロリスト役をするのは、イスラム教徒だけだ。

その理由は、軍産と組んでいるイスラエルが、四方をイスラム教徒の敵に囲まれており、イスラム教徒=テロリストの構図が世界に定着すると、イスラエル=善、イスラム教徒=悪の構図ができて、イスラエルに好都合だからだ。

テロ戦争が起きなかったら、イスラエルはパレスチナ人に対する人権侵害に関して、世界から悪のレッテルをもっと強く貼られていたはずだ。

イラクなど、イスラエルの敵だった中東の国々に、テロ戦争の一環で米軍が駐留してくれることも、イスラエルの安全に貢献する。

 テロ戦争は、軍産イスラエルにとって素晴らしい戦略だったが、運用が(故意に)稚拙で失敗した。

テロ戦争は、低強度で長期的にやるべき戦争だったが、911の翌日から、高強度の大戦争をやりたがる勢力(ネオコン、タカ派)が米政権内で騒ぎ出した。

国防副長官など政権中枢の要職を占めたネオコンは、イラクに大量破壊兵器(WMD)保有の濡れ衣をかけて侵攻し、占領の泥沼にはまるイラク戦争を引き起こした。

ネオコンはイスラエル右派系の勢力だが、事後にWMDの濡れ衣が世界にばれてしまうずさんな謀略の組み方で、ベトナム戦争以来の「過激にやってわざと失敗させる」隠れ多極主義のやり方が散見された。 (ネオコンの表と裏)

 イスラエル自身は、イラク侵攻に賛成していなかった。

イラクのフセイン政権(スンニ派)はイラン(シーア派)と敵対し、米イスラエルにとって好都合な、イラクとイランの恒久対立の構図を持続してくれていたが、フセインが倒され、ネオコンが提唱する「中東民主化」の一環でイラクが国民の6割を占めるシーア派の政権になると、イラクがイランの傘下に入ってしまう。

その後現実になったこの展開を、イスラエルは事前に懸念し、フセイン政権を潰すなら、その前にイランを政権転覆して無力化してからにしてほしいと米国に伝えていたが、ほとんど無視された。

 イラク侵攻は、軍産イスラエルによる恒久低強度なテロ戦争を、短期間で自滅的に破綻させる効果(たぶん意図)があった。

ネオコンは、テロ戦争の首謀者でなく(下手な運営による未必の故意的な)破壊者だった。

イスラエルは次善の策として、イランに核兵器保有の濡れ衣をかけ、永久に経済制裁し続けるイラン核問題の構図を強化した。

イランは、フセイン後のイラク(のシーア派地域)を手に入れながらも、米欧に経済制裁されて窮した。

 11年に米軍がイラクから撤退し、同年5月には米海兵隊がテロ戦争の「敵」アルカイダの指導者とされたオサマ・ビンラディンを殺害し(たことにして)、テロ戦争は終わりになったように見えた。

私は「テロ戦争の終わり」と題する記事を何本か書いた。

 だがその後、14年にISISが登場し、テロ戦争の構造が復活した。

ISISは、イラク駐留米軍が11年に撤退するまでの期間、米軍が運営する監獄の中でイスラム過激派による組織作りを黙認するかたちで間接育成した組織だ。

イラクから軍事撤退し、ビンラディンを殺したことにして、テロ戦争を終わらせようとしたオバマの策に対する軍産からの反撃がISISだった。

米軍は、オバマ意向を無視してISISを支援し、アサド政権を倒してシリアを無政府状態・恒久内戦の「中東のアフガニスタン」にしようとした。

同時期にリビアも、カダフィ政権が潰されて分裂し、内戦状態に陥り、ISISが入り込んだ。

 いったんアフガン状態に陥ると、安定を取り戻すのが困難になる。外部勢力が仲裁し、武装勢力どうしで連立内閣を作っても、武器が多く残っているので、少しの内紛ですぐ内戦に戻ってしまう。

米政府内は軍産系の勢力が強いので、米国が仲裁しても「ふりだけ」でしかなく、うまくいかない。

何とか軍産の中東恒久戦争策を抑止したいオバマが進めたのは、イランとロシアにISIS退治をさせることだった。

オバマ政権は、昨年からイラン核問題を解決することに注力した。

イランは以前から、ISISと戦うアサド政権を支援していたが、経済制裁されているので資金難で、苦戦していた。

 イランに核兵器保有の濡れ衣を着せて経済制裁することは、フセイン政権が潰れた後のイラクを傘下に入れて強くなるイランをへこますため、イランを脅威とみなすイスラエルが、米政界に影響力を行使してやらせていたことだった。

オバマは、米議会やイスラエルからの圧力を何とかはねのけ、今年7月、イラン制裁の解除にこぎつけた。

 そしてオバマは、その前後からケリー国務長官を何度もロシア側と会わせ、プーチンがシリア内戦の解決に動くよう働きかけた。

ロシアは当初、シリアの反政府派とアサド政権を和解させる交渉の仲介を続け、効果が上がらないとわかると、アサド政権の依頼を受けて10月からロシア軍をシリアに進出させ、直接にISISやアルカイダを空爆し始めた。

 露軍のシリア進出によって、ISISが退治されていく流れがほぼ確定した。

ISISはシリアだけでなくイラクでも退治される方向だ。最近の記事に書いたように、ISISが占領するイラクの大都市モスルを奪還しようとするスンニ派民兵(ハシドワタニ)とクルド軍(ペシュメガ)を訓練するため、12月初めにトルコ軍が北イラクに越境進軍(増派)した。

イラク政府はトルコ軍の侵入に猛反対し、オバマ政権もイラクに味方してトルコに圧力をかけた結果、トルコ政府は12月20日に軍の撤退を決めた。

 しかしこの撤退は、ISISのモスル支配が今後も看過されることを意味しない。

イラク政府は、トルコの進出に触発され、イラク政府軍とシーア派民兵団が、ISISからの奪還戦を展開してきたラマディの奪還が完了したら、次はモスルの奪還に着手すると12月25日に表明した。

12月27日にはイラク軍がラマディの中心街にある政府庁舎をISISから奪い、ラマディ奪還がほぼ完了した。

シーア派主導のイラク政府(とその背後のイラン)は従来、スンニ派地域であるモスルの奪還に消極的だったが、トルコがモスル奪還を支援して自国の影響下に入れようとする動き出したのを見て、これまでの消極性を捨てて、積極的にモスル奪還へと動き出した。

 イラク政府が本腰を入れるので、トルコはいったん撤退することにしたのだと考えられる。

イラク政府が口だけで実際の軍事行動をしない場合、しばらくするとまたトルコ軍が北イラクに出てくるだろう。

イラク政府と、背後にいるイランは、これまでないがしろにしてきたイラクのスンニ派地域の安定化に動かざるを得なくなっている。

ISISは来年、イラクより先にシリアで退治され、余力が出た露空軍は、イラク政府の要請を受けてイラクのISISを空爆するようになるだろう。

露軍が入ってくると、米軍はイラク政府に「露軍か米軍かどちらかを選べ」と迫るだろう(すでに迫っている)。

イラクは露軍を選ぶので、米軍はイラクから出ていくことになる。

 こうした展開は、イスラエルにとって脅威だ。

ISIS退治後の中東は、ロシアがシリアとイラクの制空権を持ち、地上ではイランが、イラク、シリア、レバノンまでを影響圏にする。

イスラエルは、シリアとレバノンにおいてイランと接することになる。

イスラエルの仇敵であるレバノンのヒズボラも強化され、露軍の制空権もあるので、イスラエルが簡単に戦いを挑める相手でなくなる。

シリアはうまくいくと来年中に内戦が終結し、選挙を経て、おそらくアサド政権の続投で安定し、シリア政府は国際社会に復帰する。

そうなると次に問題になるのが、イスラエルが1967年の中東戦争でシリアから奪ったまま占領しているゴラン高原だ。

イスラエルに対し「ゴラン高原をシリアに返せ」という要求が国際的に強まる。

 イスラエルは米国の要人を盗聴して弱みを握ったり、ユダヤ系が多いマスコミに歪曲報道をさせたり、ユダヤ系の金持ちを動かし(脅し)てイスラエルに楯突く勢力の資金を枯渇させたりして、米国の政界を牛耳り、世界最強の政治力を保持し、覇権戦略をねじ曲げてきた。

だが今の中東は、米国の覇権戦略が破綻し、代わりに露イランが動いてISISが退治されていき、米国がそれを容認せざるを得ない事態だ。

ISISは、米軍や同盟国であるトルコに支援されているが「テロ組織」なので、露イランがISISを退治していくことに誰も反対できない。

 イスラエルが、いくら米国を動かす力を持っていても、露イランがISIS退治して中東への支配力を強めることを、止めることができない。

イスラエルは、覇権国である米国を支配しても、自国の安全を守れなくなっている。

米国中枢は、しばらく前から、オバマと軍産イスラエルの暗闘になっているが、オバマは今年、露イランを動かし、軍産とイスラエルを無力化することに成功した。

 そもそもイスラエルの軍部・諜報界には、ISISにアサド政権を倒させることがイスラエルにとって安全を向上させず、むしろ危険を増す転換になるとの懸念が、以前からあった。

アサド政権はゴラン高原を奪ったイスラエルを敵視しているし「独裁」でもあるが、イスラエルにとって、敵対したまま安定した関係を持てる利点があった。

アサドが倒されると、シリアはイスラム過激各派がバラバラに支配する無政府状態になり、それらの中にはイスラエルを越境攻撃しようとする勢力が出てくる。

アサドが独裁的にシリアを安定させてくれていた方が良かったということになりかねない。

ISISの指導者バグダディは、シリアを乗っ取ったら、その後、西岸やガザに進出し、イスラエルを標的にすると宣言するメッセージを流している。

 イスラエルは、シリアが内戦化した後、ゴラン高原の隣接地域にいたアルカイダ系のヌスラ戦線と話をつけ、ヌスラの負傷兵をゴラン高原の軍病院で治療してやり、ヌスラがイスラエルを攻撃してこないようにした。

イスラエルは、ヌスラを手なずけることで、それ以外のイスラム過激派がイスラエルに越境攻撃を仕掛けてこないようにした。

イスラエルが、シリアの内戦化やアサド政権の崩壊を懸念していることは、こうした状況からもうかがえる。

 イスラエルが米政界を牛耳っており、イスラエルにとってアサド続投の方が望ましいなら、米政界や米軍によるアサド転覆の試みをやめさせればよい。

それができないのだからイスラエルは米政界を牛耳っていると言えない、と考える人がいるかもしれない。

それは間違いだ

。話がどんどん複雑になって恐縮だが、米政界を牛耳っているのは「イスラエル政府」でなく、在米ユダヤ人を中心とする「イスラエル右派(過激な極右)」である。

米政権中枢に入ってイラク侵攻を起こしたネオコンはその一派だ。

 ユダヤ極右は、親イスラエルを掲げているが、世界のイスラム教徒が激怒する、イスラム聖地への冒涜や、パレスチナ人殺害、中東和平への妨害を繰り返している。

イスラエルの安全よりも、米イスラエルとイスラム世界との敵対を扇動することを優先している彼らが、AIPACなど在米イスラエル団体を通じて米政界を牛耳っているため、米国の戦略は、イスラエルの安全を無視して中東を無茶苦茶にする策になっている。

イラク侵攻前、イスラエルの諜報界が「イランが強化されてしまうぞ」と懸念を示唆したのに、米国のネオコンは無視して侵攻を挙行したのも、同様の構図だ。

 今後、露イランなどがISISを短期間に全滅させられず、戦線が膠着した場合、ISISは西岸やガザに入り込む傾向を強めるだろう。

2国式(パレスチナ国家創設案)の中東和平が頓挫したままなので、2国式を前提に作られたパレスチナ自治政府(PA)は今夏ごろから崩壊に瀕しており、いつPAが正式に解散してもおかしくない。

ケリー国務長官ら米高官が、何度も警告を発している。

イスラエル政府は極右に乗っ取られ、和平交渉を担当する外務大臣すら置かれず、イスラエル外務省は過激な発言を繰り返す極右の次官(Tzipi Hotovely)に握られたままだ。

 PAが潰れると西岸の混乱に拍車がかかり、パレスチナ人の若者が過激な思想に走り、ISISが組織を作りやすくなる。

西岸が崩れると、ガザでも、ハマスより過激なISISが台頭する。

この展開は、イスラムとユダヤの過激派どうしがパレスチナ・イスラエルで戦うことになり、まさにイスラエル極右が望むところだ。

従来イスラエル政府は、PAやガザのハマスと対立しつつも連絡を取り合って何とか安定を維持してきたが、ISISがPAやハマスを押しのけると、イスラエルは連絡する相手もいなくなり、自国の不安定化を看過するしかなくなる。

 いずれパレスチナの混乱が頂点に達すると、ユダヤ極右がエルサレムの「神殿の丘」を完全に乗っ取り、イスラム教徒を追い出して「ユダヤ第三神殿」を建設しようとするだろう。

これはキリスト教右派がいうところの「イエスの再臨」「ハルマゲドン」につながる事態だ。

ユダヤ極右は、聖書やコーラン(クルアン)に描かれている「終末」を連想させる状況を意図的に作り、イスラム・キリスト・ユダヤの3つの一神教(実はひとつの「一神教」の3宗派)の世界中の信者たちを扇動し、宗教戦争を起こそうとしている。

ISISとユダヤ極右は、事態を激化するための「同志」である。

半面、プーチンやオバマは、この危険な「ハルマゲドンごっこ」をやめさせようとしている。

これは宗教のふりをした政治の劇だ。

「ごっこ」じゃないぞと言う人は「軽信者」か「狂信者」だ(あえてこう書く)。

 来年は、米国で大統領選挙がある。

今の予測では、次期大統領は共和党のトランプか民主党のヒラリークリントンだ。

トランプは親プーチンで、ネオコン(イスラエル右派)に敵視されている。

彼が勝つと、オバマと同様、軍産イスラエルを封じ込めてくれると期待できる。

対照的にヒラリーは、イスラエル右派にすり寄る旧来型の手法で、イスラエル右派に対していろいろ約束させられているだろうから、彼女が当選すると、オバマとプーチンが今年やったことを逆流させようとするだろう。

 米政界は911後、軍産イスラエルに対し、積極的に傀儡になると簡単に当選でき、楯突くと落選させられる状態だった。

だが今年、オバマとプーチンが中東で風穴を開けた結果、軍産イスラエルの政治力やプロパガンダの能力が低下している。

トランプはこの状況を見て取り、従来の常識からすると型破りな、軍産イスラエル・マスゴミ複合体に楯突く姿勢をあえて採っている。

トランプがどこまで勝ち進むかは、見えにくい複合体の力量を示すメーターでもある。

 再来年にオバマが任期切れで辞めた後、中東情勢が逆流するかもしれない。

イスラエル政府は、露軍のシリア進出を黙って見ているが、オバマの任期が終わるのを待っているのかもしれない。

オバマとプーチンとイランは、来年の1年間でISISを退治し、シリアとイラクを安定化する必要がある。


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初版日時: 2017-10-18 (水) 21:56:29
最終更新: 2018-04-13 (金) 18:51:11 (JST) (109d) by hikoichi